2023年05月
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胃がん治療でカプセル型X線線量計を開発、リアルタイムで照射線量を5倍正確に測定 シンガポール

シンガポール国立大学(NUS)は4月14日、理学部の研究者らが放射線治療をリアルタイムでモニタリングする、新たなカプセル型X線線量計を考案したことを発表した。安価で、しかも現在の標準的な方法よりも約5倍正確に照射線量を測定できるという。研究成果は学術誌Nature Biomedical Engineeringに掲載された。

リウ・シャオガン(Liu Xiaogang)教授(左)研究チーム

胃がんは、世界で最も多いがんのひとつである。放射線治療では腫瘍組織を正確に狙い、健康な組織へのダメージを最小限に抑えることが重要だ。しかし、患者の多様性、治療の不確実性、照射方法の違いなどから、効果が低く、治療成績が変動しやすいという課題がある。照射された放射線量と吸収された放射線量をリアルタイムモニタリングすることができれば、放射線治療の精度と効果の向上につながることから、安価で飲み込み可能なセンサーが求められている。

18ミリ×7ミリのカプセル

この課題に対処するため、NUS理学部化学科のリウ・シャオガン(Liu Xiaogang)教授率いる研究チームは、NUSヨンルーリン医学部、中国の清華大学、中国科学院深圳先進技術研究院の研究者と共同で、飲み込んで使用するカプセルX線線量計を開発した。カプセルが捉えた情報から放射線量を計算するニューラルネットワークベースの回帰モデルを活用し、現在の標準的な方法よりも約5倍正確に照射線量をモニタリングできることを発見した。

カプセル線量計内のコンポーネント ©Nature Biomedical Engineering,2023
(提供:いずれもNUS)

カプセルには放射線の存在下で発光するナノシンチレータを封入した光ファイバー、pH応答性フィルム、胃液サンプリング用の複数の注入口を備えた流体モジュール、線量およびpH測定用の2つのセンサー、モバイルアプリケーションに送信する光電信号を処理するマイクロコントローラー回路基板、カプセルの電源を供給するボタンサイズの酸化銀バッテリーなどが含まれている。製造コストは50シンガポールドル程度であり、医薬品で一般的なサイズである18ミリ×7ミリに設計されている。

「この新しいカプセルは、放射線治療の効果を手頃な価格で効果的にモニタリングするための画期的な製品です」とリウ教授は述べた。研究チームは今後、摂取後のカプセルの位置と姿勢の特定、意図した標的部位にカプセルを固定するためのポジショニングシステムの開発など臨床使用に向けた研究を進める予定だ。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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