2023年05月
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食中毒菌のリアルタイム検知技術や腸の迅速検査キットの開発に助成金 シンガポール

シンガポールと米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究技術アライアンス(SMART : Singapore-MIT Alliance for Research and Technology)は4月18日、SMARTの3つの研究チームとそのパートナー機関が、シンガポール国立研究財団(NRF)が実施するIntra-CREATE助成金を授与されたことを発表した。

これらの研究は、SMARTで開発された既存の技術をベースにしており、健康アプリケーションの診断能力にイノベーションを起こすものだ。

授与された1つ目の研究チームは、SMARTの破壊的・持続的精密農業技術(Distap)学際研究グループ(IRG)の研究者らで、食中毒菌を検出できる食品包装の開発に取り組んでいる。刺激応答性ナノセンサーと抗菌性ハイドロゲルを加えたタンパク質ベースのフィルムを作り、食中毒菌をリアルタイムで検知する生分解性の食品包装を実現する予定だ。

2つ目の研究チームも、SMARTのDistap IRGの研究者によるチームだ。血清と便のサンプルからインドール3-プロピオン酸(IPA)を検出し、健康を迅速に評価する迅速検査キットを開発している。IPAは、ヒトの腸内細菌叢が産生する低分子代謝物で、腸管免疫反応を制御し、過剰な炎症を抑制する。腸の炎症が活発な患者はIPA濃度が低下し、炎症が回復するとIPA濃度が増加することから、腸の健康状態を示す新たな指標となる。

3つ目の研究チームは、SMARTの薬剤耐性(AMR)および個別化医薬品製造のための重要な分析手法グループ(CAMP)IRGの共同研究チームで、生体試料中の低濃度病原体を迅速に検出できる新規診断技術開発を行っている。感染症に罹患した場合、血液中の病原体検出には通常7日間を要する。開発中の技術では、細菌濃縮を行い、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の一種であるデジタルループ媒介等温増幅法によって早期の細菌感染診断を可能にする。この細菌濃縮を行うための、サンプル調整装置として静電精密ろ過装置を開発予定だ。

これらのプロジェクトの助成金は2023年4月1日に開始され、18カ月間実施される。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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