タイ国立科学技術開発庁(NSTDA)は5月2日、所管するタイ国立電子コンピューター技術研究センター(NECTEC-NSTDA)とタイのカサセート大学の研究者が、画像ベースのイネの病気診断サービスと病気管理に関する提案を行うチャットボット「Rice Disease Bot」を共同開発したことを発表した。
タイはコメの生産量と輸出量で世界第4位、年間生産量は2600万トンに上る。一方で、コメ農家は、生産コストの上昇、気候変動の影響、病気の発生など、複数の課題に直面している。
NECTEC人工知能(AI)研究グループの研究員であるワシン・シントゥピニヨ(Wasin Sinthupinyo)氏は「このサービスはLINEアプリから簡単に使用できます。ユーザーは感染した作物の写真を撮影し、LINEのチャット機能を使って送信します。すると、AIとディープラーニングを使用して画像分析が行われ、3~5秒以内に、結果と病害管理に関する推奨事項が提供されます」と指摘。続けて「このサービスは、カセサート大学植物病理学科、コンピューター工学科などさまざまな研究グループの協力のもと、植物病理学、画像データベース作成、AI開発など複数の専門知識を統合し開発されました。現在、タイのコメ生産にとって重要ないもち病をはじめとする10種類の病気を特定することができます」と述べた。
ワシン・シントゥピニヨ(Wasin Sinthupinyo)氏(中央)ら研究チーム
開発者のひとりであるカセサート大学植物病理学部のスジン・パタラプワドール(Sujin Patarapuwadol)助教授は、これまで国内の農家3200人にRice Disease Botを紹介するワークショップを実施してきた。同助教授は「使用した農家の皆さんからは、使い勝手がいいためこのシステムを仲間に勧めたいという声をいただいています。コメの生産に影響を与える要因は、害虫や栄養不足など病気以外にもあります。そのため、今後は農家のニーズに応えるためにさらなる開発が必要です」と語った。
(出典:いずれもNSTDA)
現在、このサービスはカセサート大学のチームと農業協同組合省管轄の機関によって、全国の農家に広められており、約3500人のユーザーがいる。Rice Disease Botは、BCGエノコミー(バイオ・循環型・グリーンを重視する新経済モデル)のガイドラインに沿ったものだ。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部