フィリピンのベンハミン・アバロス(Benjamin Abalos Jr.)内務自治相が、地方自治体(LGU)にエルニーニョ現象の悪影響に備えるよう呼びかけた。これに対して、地方自治体連盟(ULAP)全国会長のダックス・クア(Dax Cua)知事が支持を発表した。国営フィリピン通信社(PNA)が5月5日付で伝えた。
危険低水位の状態にあるフィリピンのブラカン州プラリデルのバランガイ・シパット灌漑用水路
(PNA photo by Joey O. Razon)
(出典:PNA)
フィリピンのブラカン州プラリデルのバランガイ・シパット灌漑用水路は、危険低水位に近い状態にある。国家水資源委員会は、5月1日から10日までの期間、灌漑用の割り当てを毎秒10m³に減らし、雨期作付けが始まる6月中旬まで供給を完全に停止することにした。
クア氏は「エルニーニョ現象が地域社会、特に農業と水資源に与える潜在的な影響を過小評価することはできません。この影響に効果的に対処するために、LGUは緩和策を準備し、実施に際して必要な措置を講じる必要があります。コミュニティの備えとレジリエンスを確保するためにLGU、国の政府機関、民間セクターの協力が重要です」と語った。
今回発表された覚書には、水の慎重な使用を促すための条例の制定、水利権業者や公共事業者による緊急修理の許可、エルニーニョ現象に関する緊急時計画の更新など、さまざまな緩和措置が盛り込まれている。また、水漏れのチェックと即時修理、雨水貯留の最大化、節水対策の実施、エアコンの温度設定を22~25℃にすることなどを市民に教育・奨励するため、コミュニティで大規模な情報・教育・コミュニケーションキャンペーンを実施する内容が盛り込まれている。さらに各LGUに対しては、雲霧播種作業の実施、輪番灌漑計画の実施、節水技術について、農省地域事務所と調整するよう促している。
クア氏は、エルニーニョ現象に備えるため、フェルディナンド・マルコス(Ferdinand Marcos Jr.)大統領の呼びかけに賛同している。マルコス大統領は、7月から来年初めにかけて国内を襲う可能性のあるエルニーニョ現象への政府の対応を行う「エルニーニョ・チーム」を設立し、関係するすべての政府機関に対し、エルニーニョ現象の影響に対処するための啓発キャンペーンを実施するなど、政府全体として取り組むよう指示している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部