シンガポールの南洋理工大学(NTU)の機械・航空宇宙工学部(MAE)の研究チームが、傷口が波状の傷のほうが、直線状の傷より早く治ること、さらにその理由として形状が細胞の動きに影響していることを発見した。5月15日付け発表。
傷口が直線状の傷(左)と波状の傷(右)。波状の隙間の周囲の細胞は、直線状の傷の細胞と比較して、ブリッジ (明るい赤で表示) を形成し、42時間までに隙間を急速に閉じた
NTUのMAE機械工学科長、K・ジミー・ヒシア(K Jimmy Hsia)氏率いる研究チームは、高度なイメージング装置を用いて人間の皮膚を模した人工創傷の細胞の動きを観察したところ、波状の創傷に近い細胞は渦を巻くように動き、直線状の創傷に近い細胞は直線状に動くことで創傷に平行に移動していることを突き止めた。
K・ジミー・ヒシア(K Jimmy Hsia)氏(左から2人目)ら研究チーム
(出典:いずれもNTU)
細胞が傷ついた組織を治すために橋をかけるギャップブリッジ(gap-bridging)には、渦を巻くような動きが重要であり、それが波状の傷の治癒プロセスを加速していると結論付けた。ギャップブリッジと創傷治癒の速さの関係を明らかにしたのは今回が初めてであり、この研究成果は、創傷管理、組織修復、形成外科などの分野で、より効果的に創傷治癒を促進させる戦略の開発につながるものとなる。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部