2023年06月
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磁気筋肉治療で高齢者の運動能力が改善、体重減少も促進 シンガポール

シンガポール国立大学(NUS)傘下の医療技術研究所(iHealthtech)の研究チームが、週に1回の磁気筋肉治療により高齢者の運動能力の改善と体重減少が促進されることを発見した。5月23日付け発表。研究成果は科学誌Agingに掲載された。

アルフレッド・フランコ=オブレゴン准教授(中央)ら研究チーム

加齢に伴い、運動機能の低下、筋力の低下、体脂肪の増加などが引き起こされる。研究チームは、38歳から91歳の101人の参加者を対象にした実験で、BIXEPSデバイスを使用し、独自の非常に低いレベルのパルス電磁場(PEMF)を毎週、照射した。その結果、12週間後に、特に高齢者の運動能力と身体組成の著しい改善が見られ、また、参加者は3カ月間の療法後に痛みが減少したと報告した。

この研究は、NUS iHealthtech、NUSのスタートアップであるクォンタムTX(QuantumTX)社、NUSヨンローリン医学部傘下の健康長寿トランスレーショナルリサーチプログラムの研究者によって共同で実施された。

研究チームのリーダーで、iHealthtechの主任研究員とクォンタムTX社の共同設立者を務めるアルフレッド・フランコ=オブレゴン(Alfredo Franco-Obregón)准教授は、「PEMFによる改善は、年齢に関係なく85%の参加者が経験しており、高齢で虚弱な参加者で最大の効果が報告されています。この結果は、PEMF療法が高齢者において運動と同等の効果をもたらすことを示唆しており、高齢者集団に対する治療的価値の可能性を持っています」と研究の手応えを語った。

これまでの研究で、東南アジアの人々は、運動をしているが、他の地域よりも内臓脂肪が多いことが分かっている。そのため、東南アジアの人々はBMI(体格指数)値が低くても糖尿病を発症することになり、東南アジアの健康産業にとって現実的な問題だった。「磁場治療という形で、この地域の医療のジレンマを解決できるかもしれません」とアルフレッド准教授は期待を込めた。

BIXEPSデバイスを使用する高齢者
(提供:いずれもNUS)

研究チームは今後、米国と香港の研究チームと連携し、異なる高齢者集団におけるフレイルへの効果を検証するためのランダムコントロール臨床試験を実施する。さらにシンガポール総合病院と協力して、糖尿病の進行を管理するためのPEMFベースの治療について臨床試験を実施する予定だ。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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