2023年07月
トップ  > ASEAN科学技術ニュース> 2023年07月

シンガポールにアジア最大級の木造建築「ガイア」が誕生―伊東豊雄氏が参画 «動画あり»

シンガポールの南洋理工大学(NTU)は、NTUキャンパス内に8棟目のゼロ・エネルギー建築物となる、アジア最大級の木造建築「ガイア」が誕生したことを発表した。5月17日付け。

式典に臨む関係者。右端は、設計に参画した日本の建築家、伊東豊雄氏
(出典:NTU)

「ガイア」はギリシャ神話の大地の女神にちなんで命名された6階建ての木造建築だ。学習、研究、イノベーションのための場であり、NTUの学生、教員、職員の出会いやコラボレーション、発見などの新しい機会を生み出す。NTUのキャンパス内で8棟目のゼロ・エネルギー建築物となり、シンガポール建築建設庁の評価制度で最高のグリーンマーク・プラチナ(ゼロ・エネルギー)を取得した。同様の評価を受けている建築物はシンガポール国内に16あり、そのうちの半数がNTUの敷地内に存在している。

5月17日に開催された式典には、同国政府からはチャン・チュンシン(Chan Chun Sing)教育相が、NTUからはホー・テクホア(Ho Teck Hua)学長、ジェニー・チュア(Jennie Chua)学長代理、ゴー・スィー・チェン(Goh Swee Chen)理事長らが出席した。

この木造建築は、伊東豊雄氏が設計に参画した。伊東氏は、建築界のノーベル賞といわれるプリツカー建築賞を受賞するなど世界的に著名な建築家だ。

今回の木造建築の特徴について伊東氏は、「何と言っても木造の大規模建築をつくったことです。LVL(単板積層材)とCLT(直交集成板)を使用した建築として世界でも有数の大規模建築になったと思います」と話す。

高温多湿のシンガポールで木造建築は向いているのか、また、どのように耐えられるのだろうか。伊東氏はこれに関して、「高温多湿のシンガポールでの設計に際し、構造に関して相当な注意を払いました。一部テラスを除き、構造に関わる部分には雨がかからないようにしています。具体的には、建物の両サイドに構造とは無関係な張り出し部分を配置しました。そこに雨があたっても問題なく、構造体には雨がかからないという仕組みです」と説明。

木造建築の利点(メンタルヘルス・いやし効果、建築素材上の環境効果など)について伊東氏は、「コンクリート造や鉄骨造とは違い、木には香りがあり、身体にやさしい感触があります。二酸化炭素(CO2)の削減という意味でも大きな効果があるので、これからも大規模な木造建築はますます普及していくことになると思います」と期待を寄せた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る