シンガポールと米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究技術アライアンス(SMART: Singapore-MIT Alliance for Research and Technology)は6月6日、SMARTの研究者らが共同研究機関とともに、肺に感染症を引き起こすMycobacterium abscessus(M.abscessus)に対して、クラリスロマイシンとリファキシミンの2つの抗生物質を組み合わせて用いると殺菌効果が向上することを発見したと発表した。研究成果は学術誌JAC-Antimicrobial Resistanceに掲載された。
M.abscessusは慢性的な肺関連感染症を引き起こす非結核性抗酸菌(NTM)の中でも最も一般的な菌の1つとして知られている。NTMによる感染症は、世界中で急増しており、健康上の懸念事項だ。これらの感染症は、一般的に使用される抗生物質の多くに耐性を持ち治療が困難とされている。現在のNTM治療においては、クラリスロマイシンを含む多剤併用療法が用いられているが、M.abscessusの亜種によっては耐性を獲得するものもあり、深刻な問題となっている。
SMARTの薬剤耐性(AMR)学際研究グループ(IRG)の研究者らは、シンガポールの南洋理工大学(NTU)とシンガポール国立大学病院(NUH)と共同で、クラリスロマイシンの効果を増強する化合物の探索を行った。その結果、消化管細菌感染の治療に使われる抗生物質であるリファキシミンが有効であることを、試験管内(in vitro)とゼブラフィッシュ胚感染モデルによる実験で明らかにした。
SMART-AMRの主任研究員であるブーン・チョン・ゴー(Boon Chong Goh)博士は「リファキシミンを強力なクラリスロマイシン増強剤として発見できたことをうれしく思っています」と述べた。
研究はシンガポール科学技術研究庁(A*STAR)の治療薬開発レビュー(STDR)、SMARTイノベーションセンター、そしてシンガポール国立研究財団(NRF)のCampus of Research Excellence and Technological Enterprise(CREATE)プログラムの支援を受けて、SMARTが実施した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部