2023年07月
トップ  > ASEAN科学技術ニュース> 2023年07月

顎骨壊死の予防へ、酸化マグネシウム修飾多孔質カーボンを開発 タイ

タイ国立科学技術開発機構(NSTDA)は6月6日、NSTDAのナノテクノロジー研究センター(NANOTEC)が、ゾレドロン酸(ZA)吸着剤として、ZA薬を長期使用する患者の顎骨(がっこつ)壊死を防ぐのに役立つ酸化マグネシウム(MgO)修飾多孔質カーボンを開発したと発表した。

ZAは、骨吸収を抑制するビスフォスフォネート系の薬剤であり、骨がんや骨粗鬆症など、多くの骨疾患の治療に使用されている。しかし、ZAの長期使用は、抜歯後の顎骨壊死の発生を助長する可能性がある。

NANOTECのポンタナワット・ケムトーン(Pongtanawat Khemthong)博士は、「ZAに関連する骨壊死に標準的な治療法はないため、現時点では予防が最善の解決策となります。吸着剤を用いて細胞に吸収される前にZAを除去する場合、吸着剤候補としてリン酸カルシウムは動物細胞に無毒であり良い候補ですが、表面積が小さいため高い効果を発揮しません」と話す。

効果的な吸着材を開発するために、NANOTEC研究チームは、タイのシリントーン国際工科大学、タンマサート大学歯学部、ステムセル・フォーライフ(Stem Cell for Life)社、シンクロトロン光研究所、国立電子コンピューター技術研究センター(NECTEC)と協力し研究を行った。

開発された吸着剤は、活性炭(AC)をMgOで修飾したものだ。ACとMgOの比率と、吸着性能に対するpHの影響について研究した結果、ZAに対して良好な吸着能力を発揮し、修飾されていないAC(14mg/g)と比較して、中性条件でZAを吸着する際に73mg/gという最高の性能を発揮することが分かった。また、密度汎関数理論(DFT)を適用してZAの吸着機構を調べた結果、MgOクラスターがZA吸着の活性サイトであることが判明した。吸着材は試験管内(in vitro)でヒト単球系細胞と細胞適合性がある。

この研究により、ZAに関連する骨合併症を予防するためのZA除去用吸着剤となる可能性があることが示された。研究チームは、活性炭をカーボンナノチューブやナノ細孔にして吸着能力を向上させるなど、研究範囲を拡大する予定だ。

(出典:いずれもNSTDA)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る