タイ国立科学技術開発庁(NSTDA)は、タイのカセサート大学および社会的企業組織であるカタリスト(Catalyst Company Limited)社と提携し、ケージフリー卵農法に関する公開セミナーを開催した。6月19日付け発表。
6月14日にタイ・サイエンスパークで開催されたイベントには、NSTDAの国立遺伝子生命工学研究センター(BIOTEC-NSTDA)、農業技術革新管理研究所(AGRITEC-NSTDA)、カセサート大学、カタリスト社から登壇者が招かれ、卵業界からは200名以上の参加者が集まった。
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、消費者が食の安全性や持続可能な生産に関心を寄せており、鶏卵業界においては、動物福祉や抗生物質の使用に対する懸念から、ケージフリーの卵に対する需要が高まっている。カシコルン・リサーチ・センターの報告によると、2019年の世界のケージフリー卵市場の総額は498万米ドルで、2020年から2025年までの年平均成長率は4.75%と高まっている一方、ケージ卵の需要は縮小しているという。
NSTDA産業技術支援プログラム(ITAP)のディレクターであるナンティヤ・ヴィリヤルバントー(Nantiya Viriyalbanthor)氏は、「ケージ飼育では鶏の行動が制限されるため、ストレスが高く、病気になりやすいことがわかっています。鶏の健康を維持するために、抗生物質がよく使われますが、抗生物質耐性や鳥インフルエンザのような病気の発生につながります。卵業界だけでなく、消費者にも良い影響をもたらすケージフリー農法への転換を求める運動が、官民双方で行われています」と業界の状況について語った。
このセミナーは、鶏卵業界が動物福祉に強くコミットしたケージフリー鶏卵生産システムへの移行を支援するプロジェクトの一環である。官民から専門家が招かれ、抗生物質に代わる微生物飼料サプリメントの開発など、さまざまな側面からケージフリー農法を支える考えや研究成果を共有した。このセミナーの後、ITAPは専門家を手配し、少なくとも10社の鶏卵生産中小企業に対し、移行を支援するための綿密なコンサルティングを行う。タイの鶏卵産業に高い動物福祉基準をもたらすケージフリー農業のコンサルタントを増やすためのトレーナー養成コースも設計する予定だ。
(出典:いずれもNSTDA)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部