2023年08月
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安定化効率で世界新記録―ペロブスカイト太陽電池を開発 シンガポール

シンガポール国立大学(NUS)は6月22日、研究者らが発明したペロブスカイト太陽電池が24.5%という驚異的な安定化効率を実現し、同種類の電池(活性面積1cm²)として世界新記録を達成したことを発表した。研究成果は、学術誌Progress in Photovoltaicsが発表した太陽電池効率表(第62版)に掲載された。

ホウ・イー(Hou Yi)助教授(右)ら研究チーム

ペロブスカイトは、高い光吸収効率と製造の容易さを併せ持つ材料の一種で、太陽電池への応用が有望視されている。NUSデザイン・エンジニアリング学部化学・生体分子工学科と、NUS太陽エネルギー研究所(SERIS)の科学者で構成される研究チームのリーダー、ホウ・イー(Hou Yi)助教授は14年以上、ペロブスカイト太陽電池の開発を行い、今回の新記録に至った。この成果は、より安価でより効率的、かつ耐久性のある太陽電池への道を開くものである。

新しい界面材料をペロブスカイト太陽電池に組み込むことに成功したことが、記録破りの成果に貢献した

「本研究では、逆構造のペロブスカイト太陽電池を開発しました。電池に組み込まれた革新的な電荷輸送材料を用いて、高い効率を達成することができました」とホウ助教授は語った。

「この新規界面材料の導入により、優れた光学的、電気的、化学的特性など、さまざまな利点がもたらされました。これらの特性は、ペロブスカイト太陽電池の効率と寿命を相乗的に向上させ、その性能と耐久性を大幅に改善する道を開きます」と、SERISのポスドク研究員であるチームメンバーのリー・ジア(Li Jia)博士は説明している。

NUS チームは、低コスト、効率的、安定したペロブスカイト太陽電池技術の商業化を進める上で重要なマイルストーンをマークした
(提供:いずれもNUS)

今後、ホウ助教授と彼の研究チームは、この研究を土台に、ペロブスカイト太陽電池技術の限界をさらに押し広げることを目指している。ホウ助教授は「私たちは、この技術を研究室から工場に導入するために、カスタマイズされた加速エージング方法を開発しています。私たちの次の目標のひとつは、25年間の動作安定性を持つペロブスカイト太陽電池を提供することです」と語った。チームはまた、ペロブスカイト太陽電池をより大きな形にして、その実行可能性と有効性を実証する予定だ。

「今回の研究で得られた知見は、化石燃料への依存を減らすための持続可能なエネルギー・ソリューションとして役立ちます。そして最終的には商業的に利用可能なペロブスカイト太陽電池製品を開発するためのロードマップとなるでしょう」とホウ助教授は付け加えた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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