2023年08月
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人間の抜け毛を機密情報の暗号化等に使用する方法開発 シンガポール«動画あり»

シンガポール国立大学(NUS)は、人間の抜け毛を機能性材料に変換する方法を開発した。これにより、機密情報の暗号化や環境汚染物質の検出に使用できるという。6月30日付け。研究成果は学術誌Advanced Photonics Researchに掲載された。

ソウ・チョン・ハウ(Sow Chorng-Haur)教授(左)ら研究チーム

人間は平均して1日に50~100本ほどの毛が抜ける。分解に時間がかかったり、分解過程でアンモニアや二酸化硫黄を含む有毒ガスが発生したりするため、人口増加につれ、毛髪廃棄物の管理に対するプレッシャーが高まる。

そこでNUS理学部物理学科のソウ・チョン・ハウ(Sow Chorng-Haur)教授らの研究チームは、紫外線の元、人間の毛髪は穏やかな青色の蛍光を発するという性質を利用し、人間の毛髪廃棄物を、加熱のみで機密情報の暗号化や汚染物質検出のための機能性材料に変換する方法を考案した。

最初の実験では、集光レーザー光線を使い、1本の黒髪の表面に小さなパターンを刻んだ。蛍光顕微鏡と紫外線の下、レーザーで刻まれた模様は毛髪の他の部分に対して、最大約400%明るく光っていた。工業用加熱プロセスの検討のために、研究者らはホットプレートの上で300~400℃で3分間毛髪を加熱した。その結果熱処理された毛髪は、蛍光顕微鏡で見ると、素の毛髪よりもはるかに明るく光っていた。「単純な加熱で毛髪が発光するという発見には驚きました。毛髪のケラチンとトリプトファンが加熱中に分解され、小さな化学副産物になることが、毛髪を明るく輝かせる大きな要因のひとつです」とソウ教授は語った。

顕微鏡を通して白色光の下で観察された毛髪の束

この結果は、メッセージや秘密の情報を物体の中に隠すステガノグラフィに毛髪を利用できる可能性を示している。毛髪に物理的な損傷を与えず、かつ蛍光パターンをエッチングできるように、集光レーザービームを調整した結果、一見何の変哲もない毛束に紫外線を当てると情報を解読することができた。

単純な加熱プロセスを通じて、人間の毛髪に化学的性質が変化し、これにより蛍光能力が強化され、パターンの形成が可能になる
(提供:いずれもNUS)

よりマクロなスケールでは、加熱処理した毛髪を有毒物質の流出検知に利用できる可能性が示唆された。研究者たちは、同じ加熱条件下で、黒髪に比べて白髪の方が蛍光の増強が大きいことを発見した。白髪はメチレンブルーに敏感である。この物質は繊維産業でよく使われ、有害な廃棄物として日常的に水域に投棄されている。この物質の存在下では、熱処理された白髪は紫外線の下で明るく輝くため、毛髪はメチレンブルー汚染を検出する安価なツールとなる可能性がある。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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