タイ国立科学技術開発機構(NSTDA)は7月10日、同国の国立金属材料技術研究センター(MTEC)-NSTDAが浴室での転倒や滑り事故を検知し警告するシステム、Gunther Bathを開発したことを発表した。
人は加齢により体力が低下する。不安定な動きと体力の低下が組み合わさると、転倒につながる。そのようなときに迅速な助けがなければ、大ケガをする可能性がある。MTECは浴室における転倒やスリップに対処するシステムを開発した。この装置はプライバシー保護のために画像記録を使用しない特徴がある。
MTECのエンジニアリング・デザイン&コンピューテーション研究グループのディレクターであるサラウット・ラースパルンサンティ(Sarawut Lerspalungsanti)博士は、Gunther Bathが壁面に取り付けられた超広域帯のアンビエントセンサー、学習とニーズ予測ハブ(LANAH)、ウェルリビング・アプリケーション、緊急ボタンで構成されていることを説明した。
アンビエントセンサーは動きを検知し、収集したデータを人工知能(AI)により処理する。LANAHは、センサーからのデータを受信し、他のデバイスに送信する中央システムとして機能する。ウェルリビングアプリは、転倒やスリップを介護者に通知するアプリだ。緊急ボタンは緊急事態を確認するために使用される。転倒やスリップが検知され、通知を受けた介護者はアプリと浴室の壁に取り付けられたスピーカーを通じてコミュニケーションし、医療支援が来るまでの指示を出すことができる。
(出典:いずれもNSTDA)
Gunther Bathにはプライバシー保護、高い検知精度、低い製造コストという特徴がある。画像を撮影・記録せずに、AIシステムにより動作パターンを学習し、転倒を正確に検知することができる。またデバイスの監視対象を1人に制限することで、製造コストも低く抑えている。
Gunther Bathは高齢者の自立生活を支援し、親族や介護者が高齢者の生活の安全を遠隔監視できるようにするためのMTECのイノベーション・デザインの一部で、この技術はライセンス供与や研究協力が可能となっている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部