タイ国立科学技術開発機構(NSTDA)は8月3日、NSTDAの国立ナノテクノロジー研究センター(NANOTEC)の研究チームがナノカプセル化の専門知識を応用し、機能性化粧品の有効性を高めるデリバリーシステムと安定化システムを開発したことを発表した。

研究チームが今回取り組んだのは、センテラアジアティカという薬用植物の、抗酸化作用と抗炎症作用を持つ成分の輸送と安定化だ。ナノライフ&機能性化粧品研究チームの研究者であるオラファン・キング(Oraphan King)博士はセンテラアジアティカに含まれる有効成分としてアジアティコサイドとマデッカソサイドを同定した。これらの化合物は強力な機能を持っているものの、経皮吸収性と安定性に乏しく、生物学的利用性と応用の可能性が大きく制限されていることが分かった。

オラファン博士は「これらの成分の有効性を高めるためにカプセル化し、皮膚透過性を高める脂質ベースのナノキャリアを開発しました」と技術について説明している。脂質ベースのナノキャリアは、光や熱による変性を防ぐとともに、カプセル化した有効成分の効果維持を目的とした安定剤も添加される。

この技術はナノ粒子・化粧品製造プラントのチームに引き継がれ、国内外の消費者にアピールする化粧品製品が作られている。ナノ粒子・化粧品製造プラントのチームの研究スタッフであるサッカリン・ドゥアマン(Sakkarin Du-a-man)氏は「顔用美容液、顔用スリーピングマスク、エマルジェル、ハンドクリームの4つの製品が開発され、それぞれ肌の老化を遅らせ、シワを減らすという優れた性能を発揮しています」と現状を紹介している。これらの製品は2つの企業と共同開発され、Herb MiracleとiNSIEMEという2つのブランドで販売されている。

機能性化粧品の開発以外にも、NANOTECの研究チームは効能改善、製品開発、品質・安全性試験など多岐に渡る研究サービスを、健康食品や化粧品業界の企業を対象とした食品・機能性成分のワンストップサービスプラットフォームであるFoodSERPのもとで提供している。

NANOTECは有能な研究チームと整ったインフラにより、タイの化粧品産業の可能性を最大限に引き出すための優れたパートナーとなっている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部