タイ国立科学技術開発機構(NSTDA)は7月25日、NSTDAの国立遺伝子生命工学研究センター(BIOTEC)の2つの研究チームが取り組む、タイの養殖産業の持続可能性促進を目的とした藻類の研究開発について公表した。
研究に取り組んでいるのは魚類とエビの分子生物学およびバイオテクノロジー研究チームとバイオサイエンスとシステムバイオロジー研究チームの2つだ。
前者のチームはタイのマヒドン大学理学部と長年に渡る協力関係を築き研究を行っている。BIOTECとマヒドン大学はエビの病気研究に特化したセンテックス・シュリンプ(Center of Excellence for Shrimp Molecular Biology and Biotechnology)を設置している。研究チームは抗ウイルス二本鎖RNA(dsRNA)を生産する微細藻類を作る新しいプラットフォームを開発した。このdsRNAはエビの飼料と一緒に投与され、ウイルスを防御する機能を持つ。これまでにエビの白点病の死亡率を70%減少させる効果があることが証明されている。また、微細藻類を生産する技術はdsRNA以外の有益な生体分子を生産する可能性もある。
研究チームのリーダーであるヴァンヴィモン・サクスマープロム(Vanvimon Saksmerprome)博士は「この技術を商業化し、バイオ医薬品産業と水産養殖産業の両方を強化したいと考えています」と語った。
後者のチームはモンクット王工科大学トンブリ校(KMUTT)と共同研究を行っている。キャッサバでんぷん工場の排水を利用したスピルリナ培養から研究が始まり、現在では大量培養、高価値化学物質生産、分子生物学の3つの分野を中心に進められている。研究チームのリーダーであるアピラディー・ホンストーン(Apiradee Hongsthong)博士は「私たちのチームは、システム生物学の広範な知識とノウハウを持っており、藻類の培養、藻類抽出物、生物活性ペプチドの生産などの付加価値を含む包括的な研究を行うことができます」と述べた。現在、研究チームはスピルリナ以外の藻類にも対象を広げ、タイの大手企業とも協力し、研究や技術移転に取り組んでいる。
(出典:いずれもNSTDA)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部