シンガポールは8月25日、カタールのムハンマド・ビン・アブドゥルラフマン・アール=サーニー(Sheikh Mohammed bin Abdulrahman bin Jassim Al-Thani)首相兼外相らを迎え、第8回ハイレベル合同委員会を開催し、浄水技術をはじめ多分野のイノベーション促進に関しての了解覚書(MoU)に署名した。
幅広い分野での科学技術協力は、地域を跨いだ国際連携の要となる
(写真はイメージ)
両国が合意したMoUのうち、科学技術振興に関連する項目は以下の3つだ。
これにより、両国のスタートアップ企業はお互いの市場にアクセスしやすくなり、交通・物流、エネルギー、製造業、デジタル化などの分野で商業的パートナーシップの締結が容易になる。とりわけ、水に関する技術協力としては、公益事業庁(PUB)の配下にある国立水資源庁が浄水技術の研究開発を進めていす。今回のMoUを契機として、2024年6月に開催される国際水週間では、カタールからも登壇者を迎える運びとなっている。
両国は、2006年に初めてハイレベル合同委員会を開催して以来、互いに小国としての共通点を有しつつ連携関係を築いてきた。最近では2017年10月の会合で、情報通信技術、安全保障、法務などの分野でも協力に合意した。実施モニタリングメカニズム(IMM)の導入で、協定事項の最適な実施に関して定期的なフォローアップを担保してきた。
カタールのサーニー首相兼外相は、リー・シェンロン首相の招きによりシンガポール初訪問となった。既に両国首脳陣も互いに確認しているとおり、両国の連携はひいては東南アジア地域と湾岸地域の地域間協力を活性化させることにもつながる。先端技術分野でアジア・太平洋地域を牽引するシンガポールの更なる成長にも資すると期待されよう。
2023年9月8日 斎藤 至(JSTアジア・太平洋総合研究センター フェロー)