シンガポール国立大学(NUS)は、シンガポールの進化する医療ニーズに対応するため、将来、即戦力となる医療専門家の育成を強化する3つのイニシアチブを導入したことを発表した。8月15日付け。
イニシアチブの導入は、シンガポールの新たな国家構想であるHealthier SGビジョンに対応した保健医療人材の育成を目指すものだ。Healthier SGビジョンはテクノロジーとアナリティクスを活用することで、高齢化社会における医療システムの改革を伴うもので、医師、看護師、歯科医師、薬剤師が協力して、地域住民の医療ニーズのあらゆる側面をサポートし、総合的なケアが必要とされる。医療専門家には学際的なトレーニングと医療提供における縦割り組織の打破が求められる。
NUSは2023年8月から、歯学、医学、看護学、薬学の学部生を対象とした学際的共通カリキュラムを導入した。カリキュラムでは、4学部の1年生約870人が特別にデザインされた5つのコースを一緒に受講し、学習の一環として医療分野を超えて協力する。このカリキュラムでは、学生に社会問題への認識と健康への影響、チームワーク、コミュニケーションスキル、プロフェッショナリズム、デジタルリテラシー、職種間教育などを行うことを目的としている。
2023~2024年度の医学部1年生から全員、バイオメディカル・インフォマティクスを副専攻として修了することが義務付けられている。この専攻では、大規模言語モデル、データ管理、医療情報システム、生物医学データ分析、医療意思決定支援システムなどのスキルを身につけ、エビデンスに基づく臨床的意思決定、効果的なコミュニケーション、戦略的リーダーシップ、起業家精神といった中核的スキルも学ぶことになる。
さらに、2023~2024年度のヘルスケア以外の学部1~3年生を対象に、統合健康学副専攻も開始される。この専攻は学際的かつ領域横断的なアプローチを用いて、健康増進のための研究開発を主導・実施し、調整することができるよう、学生を教育することを目的としている。
NUSの副学長(学務担当)兼プロボーストであるアーロン・テアン(Aaron Thean)教授は、「ヘルスケア教育に学際的な視点を取り入れる取り組みは、急速に変化する世界において、卒業生がより豊かなキャリアを築けるようにすることを目的としています」と話した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部