2023年12月
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鍛冶の「加熱と打撃」から着想、異なる特性を持つ金属部品を3Dプリントで作成 シンガポール

シンガポールの南洋理工大学(NTU)は、シンガポール科学技術研究庁(A*STAR)と英ケンブリッジ大学の研究者らと共同で、異なる特性を持つ金属部品をカスタマイズして3Dプリントし、さまざまな特性を備えた金属部品を作成する新しい方法を開発した。10月31日付発表。

NTUの研究員、ガオ・シュボ博士 (左)ら研究チーム

NTUのガオ・フアジャン(Gao Huajian) 特別栄誉教授と、研究当時NTUの教員で、現在ケンブリッジ大学のマッテオ・セイタ(Matteo Seita)准教授が共同で率いる研究者チームは、3Dプリントのステップを用いることでカスタマイズした金属部品を作成する方法を開発した。

この方法では強度レベルの異なる3Dプリント金属部品を設計できるほか、理論的には同じ金属で導電性や耐腐食性のレベルを変えるなどの特性を持つ部品を設計できるようになる。この方法は従来の金属製造プロセスとは異なり、原材料を追加したり、機械的処理、または金属を別の材料でコーティングするなどの機械加工を施したりする必要がないため、製造コストの削減につながると考えられる。

研究者らはこの方法を開発するために、数千年の歴史がある鍛冶の工程である「加熱と打撃」からヒントを得ている。これに材料科学と機械工学の原理を組み合わせ、通常は印刷した金属の欠陥を除去・防止するために使用される3Dプリンティング技術を応用して、金属の微細構造を変化させ、その特性を変えることに成功した。

NTUとケンブリッジ大学が、異なる特性を持つ金属を3D プリントする実験で使用した機器の1つ
(出典:いずれもNTU)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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