2023年12月
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グラフェンを用いた繊維状の亜鉛イオン電池を開発 タイ

タイ国立科学技術開発機構(NSTDA)傘下の国立ナノテクノロジー研究センター(NANOTEC-NSTDA)が、ケーブル/ファイバー型亜鉛イオン電池に向けたグラフェンベースのファイバー電極の開発に成功した。ウェアラブル機器での使用を見込む。11月20日付発表。米ノースカロライナ州立大学との共同開発。

スマートウオッチや電子リストバンドなどのウェアラブルデバイスは、健康モニタリング、非接触決済、通知機能を含む多機能性により人気が高まっている。一方で、ウェアラブル技術の急速な発展にも関わらず、その進歩がバッテリーの限界によって妨げられている。一般的に使用されるリチウムイオンバッテリーは柔軟性に欠け、高温にも弱く、火災や爆発などの潜在的な安全リスクを抱えている。

これらの課題を克服するため、NANOTEC-NSTDAとノースカロライナ州立大学の研究者らは、柔軟性、耐熱性、環境への配慮を兼ね備えたウェアラブル機器用のケーブル型亜鉛イオン電池を開発する研究を行った。

ナノ機能性繊維研究チームのナカリン・サブジャラーンディー(Nakarin Subjalearndee)博士はファイバー形状のエネルギー貯蔵デバイスの作成に重点を置いた研究を行い、ケーブル/ファイバー型亜鉛イオン電池用のグラフェンベースのファイバー電極の開発に成功した。この電極を使った亜鉛イオン繊維型電池は、柔軟性と安全性に利点を持ち、スマートウオッチ、電子リストバンド、電子ストラップ、小型IoT(モノのインターネット)機器など、幅広いウェアラブル機器に応用可能だという。

(出典:いずれもNSTDA)

この技術は実験室で検証され、技術成熟度においてTRL4を達成しており、今後6〜7年以内に実用化できる見込みだ。研究成果は2つの学術誌に掲載され、特許も出願しており、研究チームはさらなる開発を推進するために民間の共同研究パートナーを探している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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