2023年12月
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COP28で炭素プロジェクトの地域協力を加速するシナリオモデリング施設紹介 シンガポール

シンガポール国立大学(NUS)は、第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)におけるシンガポールパビリオンで、自然ベースの炭素プロジェクトにおける地域協力を促進することを目的とした新しいシナリオモデリング施設であるNUSディシジョンシアターを紹介した。11月30日付発表。

(提供:NUS)

この施設は、NUSの気候変動対策センター(CNCS)がSTエンジニアリング(ST Engineering)社の衛星データおよび地理空有間分析事業であるSTエンジニアリング・ジオインサイツ(ST Engineering Geo-Insights)社と共同で開発したもので、NUSのケント・リッジ・キャンパス内に設置された。NUSディシジョンシアターは、CSCSとSTエンジニアリングジオインサイト社が2022年のCOP27で発表したカーボン・プロスペクティング・ダッシュボードをベースにしている。このダッシュボードは査読を受けた科学論文に掲載されたデータと分析に基づき発展させたものだ。

この施設でユーザーは、炭素クレジット(温暖化ガスの排出削減効果を取引できるかたちにしたもの)の種類、プロジェクト期間など、さまざまなパラメーターを調整し、特定の場所で炭素プロジェクトを設立した場合の経済的可能性とコベネフィットをシミュレーションすることができる。これにより、政策立案者、投資家、炭素プロジェクト開発者などは、東南アジア10カ国における自然ベースの炭素プロジェクト設立のための戦略的協力関係を検討することが可能となり迅速な行動につなげることができる。

パラメーターとして指定できる炭素クレジットは東南アジア10カ国の保護、回復、森林被覆率が高く森林減少が低い国・地域(HFLD)の3つのタイプだ。現在HFLDのクレジットはまだ市場で取引されていないが、施設では利用可能となっている。

NUSの副学長兼チーフ・サステイナビリティ・サイエンティストでCNCSディレクターのコー・リアンピン(Koh Lian Pin)教授は「国、企業、炭素プロジェクト開発者などのステークホルダーが集まり、パリ協定の下での国家決定貢献、自主的なネットゼロの誓約、その他の気候目標など、さまざまな目標を達成するために東南アジアの自然をどのように保護するかについて、各シナリオとトレードオフを検討することを可能にします」と述べた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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