シンガポールと米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究技術アライアンス(SMART: Singapore-MIT Alliance for Research and Technology)は、T細胞培養液中の細菌や真菌の存在を、わずか24時間で検出できる方法を開発した。
細胞そのものを薬とする細胞医薬品は難病治療薬として期待されている。例えば、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)は血液関連がん治療に用いられている。細胞は滅菌できないため、患者に投与する前に細胞医薬品が微生物汚染されていないことを保証することが最も重要である。
本研究は、SMARTの個別化医薬品製造のための重要な分析手法グループ(CAMP)IRGの共同研究チームが、NUSの環境生命科学工学センター(SCELSE)、およびMITと共同で行った。T細胞培養液中の汚染物質の検出には通常7~14日かかるが、新しい方法では24時間で完了する。さらに、微生物汚染物質種の効果的な判定、また低存在レベルの汚染物質の検出を行うことができ、より安全でより迅速な納期を実現し、T細胞治療療法への道を開くものだ。
研究者らは、正確さとスピードを確保するために、機械学習アルゴリズムとともに、第3世代ナノポア・ロングリードシーケンスやDNA抽出などの最先端技術を採用した。このプロセスを通じて、研究者たちは、迅速に、低存在量レベルでも微生物汚染物質の存在と種類を特定することに成功した。「バイオ医薬品メーカーにとって、より迅速な製品バリデーションが可能となり、ダウンタイムが短縮され、製品化までのタイムラインが短縮される可能性があります。これらの進歩は、品質管理を強化するだけでなく、全体的な効率と費用対効果を向上させ、最終的には細胞治療製品の安全性と信頼性を確保することで患者に利益をもたらす可能性に満ちたものです」と、論文の筆頭著者であるジェームズ・ストラット(James Strutt)博士は語った。
本研究はシンガポール国立研究財団(NRF)のCampus of Research Excellence and Technological Enterprise(CREATE)プログラムの支援を受けてSMARTが実施した。
(2023年11月27日付発表)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部