2024年01月
トップ  > ASEAN科学技術ニュース> 2024年01月

使用済みバッテリーとバイオマス廃棄物から亜鉛イオン電池を開発 タイ

タイ国立科学技術開発機構(NSTDA)は、同国のチュラロンコン大学、国防科学技術省と共同で、使用済みバッテリーとバイオマス廃棄物から、亜鉛イオン電池を開発した。

バンコクでは毎月、最大5トンのバッテリーが廃棄されているが、現在のリサイクルプロセスではバッテリー中の亜鉛やマンガンなどの貴重な元素を回収することができない。そのため、使用済みの亜鉛-炭素電池やアルカリ電池を処理することは大きな課題となっている。

タイ国立エネルギー技術センター(ENTEC)エネルギー貯蔵技術研究チームのチャクリット・スリプラチュワブウォン(Chakrit Sriprachuabwong)博士は、「使用済みアルカリ電池と亜鉛-炭素電池には亜鉛やマンガンといった貴重な元素が含まれており、循環経済を維持するために回収する必要があります」と説明した。

研究は、競争力プログラム管理ユニット(PMUC)の資金提供を受けて、NSTDAとチュラロンコン大学が行った。湿式冶金法で使用済みバッテリーから亜鉛とマンガンを抽出し、電気化学的沈殿法で2つの金属を他の化合物から分離した。開発されたプロセスは50%以上の回収率を達成し、アルカリ電池の場合は70%に達した。

(出典:いずれもNSTDA)

また、二酸化炭素の排出を最小限に抑えながら活性炭を作るため、パーム核の殻、竹くずなどのバイオマス廃棄物を真空状態で熱処理した。開発したプロセスで亜鉛とマンガン、活性炭という主要成分を得た後、研究チームは亜鉛イオン電池の製造を設計した。回収された亜鉛は正極に、リサイクルされたマンガンはバイオマス由来の活性炭とともに二酸化マンガンに変換され使用されている。電池の機能テストでは、この亜鉛イオン電池の電圧は1.2V、容量は180〜200mAh/g、寿命は充電サイクル1,000回以上であることが分かった。研究チームは現在、工業用途向けに製造プロセスの規模を拡大している。

亜鉛イオン電池は熱にも湿度にも強い一方、比較的重いため、耐久性と安全性が求められる家庭用蓄電システムなどの定置型機器に適している。さらに軍事施設や石油掘削施設など、高い安全基準が要求される任務にも配備されている。この研究プロジェクトは、タイのバイオ・循環型・グリーンを重視する新経済(BCG)モデルを推進するイニシアチブの一環であり、材料の循環性とグリーン製造に重点を置いている。

(2023年12月4日付発表)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る