シンガポールの南洋理工大学(NTU)は、傘下のエネルギー研究所(ERI@N)が、シンガポール土地管理庁(SLA)と共同で、同国のクス島(Kusu Island)の電力を太陽光発電だけで賄い、水の自給自足も行う研究プロジェクトを進行中であることを明らかにした。
(出典:NTU)
ERI@NとSLAは2019年、沖合の島々における再生可能エネルギーシステムの研究、設計、展開に関する200万シンガポールドル規模の研究協力契約を締結した。クス島では、2020年に太陽光発電による海水逆浸透膜淡水化システムと、140kWの太陽光発電システムの配備が開始され、電力と水の供給を自給自足できる島となる。これは、南の島々で初の太陽光発電による海水淡水化システムプロジェクトである。
ERI@Nの研究者たちは2020年にプロジェクトを開始し、クス島のエネルギーと水の需要を分析した。成果の1つは、年間230MWh以上の発電が可能な太陽光発電所だ。ラグーンを利用したソーラーパネルの効率は、従来の屋上を利用したソーラーパネルよりもさらに高く、パネルの下にある水の冷却効果により、10~15%程度性能が向上した。
このプロジェクトはNTUの2025年戦略計画の一環で、気候変動や持続可能性といった人類最大の課題に取り組むことが目的。国連の持続可能な開発目標(SDGs)に沿って、シンガポールの離島をゼロエネルギーサイトとするためのスケーラブルな技術を実証することを目指している。
再生可能エネルギーだけでなく、十分な量の清潔な飲料水を確保し、コミュニティの持続可能な発展を可能にすることがプロジェクトの目標である。現場の大規模プロトタイプに加え、高度な遠隔監視技術も導入し、ジュロン島にあるNTUスマートキャンパスから再生可能エネルギーによる海水淡水化システムを制御できるようにしている。
(2023年12月8日付発表)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部