2024年01月
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ディープラーニングでRNA配列から立体構造を予測するDRfold開発 シンガポール

シンガポール国立大学(NUS)のがん科学研究所(CSI Singapore)が、人工知能(AI)とディープラーニング技術を活用して、RNAの配列からその立体構造を予測するDRfoldを開発した。研究成果は学術誌Nature Communicationsに掲載された。研究チームはDRfoldのソースコードを次のウェブページで公開している。https://zhanggroup.org/DRfold

RNAは一本のヌクレオチド鎖からなる生体分子で、DNAからタンパク質のアミノ酸に変換する際の、転写および翻訳プロセスにおける役割が知られている。近年、それ以外のさまざまな生物学的プロセスの制御においてもRNAは重要な役割を担っていることが判明しており、新規の創薬ターゲットとして位置づけられている。

RNAはタンパク質と比べて一般的に安定性が低いと考えられている。そのため、従来の物理学や統計学に基づく力学場では誤差が発生しやすく、立体構造を正確に記述することが難しい。また、プロテインデータバンク(PDB)に登録されているRNAの実験的構造情報は限られていることから従来の知識ベースの予測は制約を受ける。

これらの課題に対応するためにDRfoldではエンドツーエンド学習と幾何拘束学習に焦点を当てたディープラーニングネットワークパイプラインを作成した。DRfoldはRNAの潜在的な機能と立体構造予測の精度を向上させた手法となっている。RNAの立体構造を予測するためにディープラーニングを利用したことにより、従来の相同モデリングや物理ベースのフォールディングシミュレーションに頼った手法に画期的な変化をもたらした。

CSI Singaporeの研究員で、本研究の筆頭著者であるリー・ヤン(Ll Yang)博士は、「RNAの生物学的機能は特定の3次構造に依存しています。RNAベースの機能評価と創薬を促進するためにRNAの立体構造を決定することがますます重要かつ必要となっています。従来の生物物理学的実験を用いてRNAの構造を決定する手法はコストと労力がかかることが多く、RNAの一部にしか適用できません。私たちの研究の目的は高品質のRNA立体構造を予測できる新しい計算手法を開発し、この実質的な情報ギャップを埋めることです」と語った。

(2023年12月21日付公表)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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