2024年01月
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低価格の慢性腎臓病(CKD)検査キットを導入、人工透析の費用削減にも寄与 タイ

タイ国立科学技術開発機構(NSTDA)傘下の国立ナノテクノロジー研究センター(NANOTEC-NSTDA)の研究者が、慢性腎臓病(CKD)の検査費用を安くする画期的な検査キットを導入した。

世界全体の人口の10%がCKDに苦しんでおり、年間100万人が死亡する。特にタイの東北地方では、2009年にはCKDの有病率が17~22%に達した。ほとんどの患者はCKDが進行した状態で罹患が発覚する。その治療費は、人工透析治療が年間20万バーツに上るなど高額で、検査費も数百から数千バーツかかる。しかも、検査サービスは主に十分に設備の整った大病院や研究所に限定されている。

NANOTECの研究チームは、パートナー機関と協力し、尿検体のみで早期での異常検出が可能なAL-Stripと、小さな病院でも導入できる定量検査であるGO-Sensorアルブミンテストの2つのテストを導入し、手頃な価格でのCKD検査を実現した。NANOTECのディレクターであるディーンペン・ジャプルン(Deanpen Japrung)博士によれば、前者は5分以内に結果が得られる家庭用の定性検査であり、後者は10~30分で結果が得られる医療専門家向けの定量的な腎臓病検査であるという。

(出典:いずれもNSTDA)

既に1,000人以上に対してこれらのキットによるCKD検査が実施され、高リスク患者への適切な医療が提供された。研究チームは現在、政府機関などからの資金援助を通じて実装段階にある検査キットのテスト製造を行っている。タイ全土への普及を目指しており、実用化に向けて技術移転に興味を持つ民間企業を探している。

(2023年12月28日付発表)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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