2024年02月
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過去2世紀の生物多様性の損失を推定する方法開発 シンガポール

シンガポール国立大学(NUS)は1月29日、生物科学科のライアン・チショルム(Ryan Chisholm)准教授らの研究チームが、過去2世紀にわたるシンガポールの生物多様性の損失を明らかにするための統計的手法を開発したと発表した。研究成果は学術誌Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS)に掲載された。

研究チームは、シンガポールの10の主要な分類群における3,000を超える生物種と50,000を超える個体の記録が網羅されたおよそ200年分の記録をまとめた。この包括的なデータセットから、シンガポールでは種の37%が絶滅したと推定された。

研究の重要な点は、開発した統計モデルがこれまで発見されずに絶滅した種を考慮していることである。推定された37%という数字は、高い絶滅率であるが、未発見のまま絶滅した種を説明しようとした2003年の推定値の半分に過ぎない。研究チームは、大型哺乳類や森林に依存する鳥、蘭、蝶など、特定のグループが特に絶滅の危機に瀕していることを明らかにした。この研究結果は、熱帯都市国家における森林伐採と都市開発の生態学的影響について、これまでで最も正確な全体像を描いていると考えられる。

チショルム准教授は、「開発された統計モデルを使うことで、知らないうちに姿を消してしまった種を説明することができます。MODGEE(matrix-of-detections-gives-extinction-estimates)モデルは、種の検出履歴全体を考慮に入れているため、絶滅種を推定するための強力なツールとなります」と述べた。

今回の研究成果は、シンガポールだけでなく、東南アジア地域にとっても重要と考えられる。東南アジアにおける森林伐採の傾向がこのまま継続すれば、2100年までに18%の種が絶滅する可能性があると研究チームは予測する。

研究者らは、東南アジアにおける今後の生物多様性について、種の大部分は生き延びると予測されるが、人間から高い関心を集める大型のカリスマ的な種の絶滅は避けられないとする「熱帯ヨーロッパ(tropical Europe)」シナリオを想定している。チショルム准教授は、このカリスマ的な生物種を中心とした地域保全を優先し、保全戦略を考えることが必要であると考えている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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