シンガポールの南洋理工大学(NTU)は2月13日、コンピュータサイエンス工学部(SCSE) の研究者らが開発した人工知能(AI)アルゴリズムによって、テキストに書かれた感情を人間のように分析したり、加工された画像を元の状態に戻したりする技術を公表した。長い動画を短いクリップに分割して検索することも可能だという。
今回、エリック・カンブリア(Erik Cambria)教授が開発したSenticNetと呼ばれるAIは、人間の学習モードと機械が使用する従来の学習アプローチを統合し、これまで不得意であった感情分析能力を向上させた。
感情を解釈するための包括的かつ多次元のフレームワークである感情の砂時計は、神経科学に触発され、心理学によって動機付けられている。肯定的な感情は砂時計の上部にあり、それに対応する否定的な感情は下部にある
SenticNetは、常識的な推論に似たフレームワークで単語の意味を分類することにより、テキストで表現された感情を推測する論理的なプロセスを持つ。このプロセスは透明性があり、その結果は再現性と信頼性がある。カンブリア教授は現在、SenticNetが抽象的な概念の背後にある意味をエンコードし、デコードする能力の向上に取り組んでいる。
サン・アイシン(Sun Aixin) 准教授が開発した技術は、教育や娯楽のための動画コンテンツをより良く利用するため、キーワードと画像を照合することで動画検索を可能にした。従来の技術は長い動画の中の特定の画像を効率的に検索することができなかったがサン准教授は、動画をテキストの一節として扱うアルゴリズムを開発し、クリップ内の特定の瞬間を検索できるようにした。この方法を使用することで、長い動画を複数の短いクリップに分割して検索することが可能となった。彼らは現在、このアルゴリズムの検索精度を向上させ、医療教育や監視カメラの映像コンテンツでの利用法を考えている。
検索のために長いビデオを複数のスケールの短いセグメントに分割する方法。クリップには理想的な一致が含まれる場合もあれば、理想的でない一致が含まれる場合もある。モデルは、一致する可能性のあるすべてのセグメントから回答を導き出す
最後に、リウ・ジーウェイ(Liu Ziwei)助教はSeq-DeepFakeと呼ばれるAIを開発した。この技術は、顔の加工によって残されたデジタル指紋を認識することにより、加工された画像にフラグを立てることができる。Seq-DeepFakeは、画像が本物か偽物かを予測するだけの従来のフェイク検出手法とは異なり、操作によって加工された痕跡を検出する。そのため、アルゴリズムの操作順序を逆にすることにより、加工された顔から元の顔に復元することもできる。リウ助教は今後、Seq-DeepFakeの機能を拡張し、テキストや動画など他の形態の加工を検出する計画だ。
Seq-DeepFake は偽の画像を検出し、変更された画像から元の画像を復元できる
(出典:いずれもNTU)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部