2024年03月
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魚の鱗の廃棄物を機能性材料に変換、水質汚染防止と暗号化材料へアップサイクル シンガポール

シンガポール国立大学(NUS)物理学科のソウ・チョン・ハウル(Sow Chorng Haur)教授率いる研究チームが、魚の鱗(fish scales)の廃棄物を、水質浄化に役立つ吸着剤や情報暗号化の材料へ再利用するための新たな方法を開発した。2月26日付発表。研究成果は学術誌Nature Communicationsに掲載された。

ソウ・チョン・ハウル(Sow Chorng Haur)教授(左)

研究チームは、魚の鱗に適度な温度を加えると、繊維製品や紙、塗料、トレーサー試験などに使用される水質汚染物質ローダミンBの吸着剤になることを発見した。ローダミンBは、がんや肝不全などの健康リスクや海洋生態系への脅威と関連した物質だ。

(右から左)ローダミンBに汚染された水のボトルを、同じ期間に加熱処理した魚の鱗の量を増やして処理した。対照の水の入ったボトルが左端にあります。魚の鱗の量が増えると、除去される赤みがかった染料の汚染物質の量も増加した

また、研究チームは、熱処理した魚の鱗が紫外線(UV)下で、鮮やかなシアンの輝きを放つことを発見した。この特性を利用することで、魚の鱗を使って文字や画像を透過させることができる。

(左から右)ローダミン B 汚染物質を吸着した魚鱗を含む魚鱗を、白色光、紫外線、緑色光の下で加熱処理したもの。緑色の光の下では、ローダミン B を吸着した魚の鱗から「NUS」という隠された単語が生成される。これは、隠された情報を伝える素材としての鱗の潜在能力を強調している
(提供:いずれもNUS)

ソウ教授は、「世界の人口が増加し、資源が限られている中、廃棄物の再利用は持続可能性にとって重要視されています。世界では、年間720万~1200万トンの魚の廃棄物が捨てられています。魚の鱗の廃棄物は、アップサイクルのための資源になると考えられます。廃棄物としていたものを再評価することで、これまで見過ごされていたかも知れない材料に魅力的な特性や多機能性を見出すことができます」と話した。

研究チームは、自然の水域に依存する地域社会や汚染された水を取り扱う研究者がローダミンBを摂取し暴露するリスクを最小限に抑えることを目的に、ローダミンBの野外検出を可能とする経済的で容易に入手可能な検査キットの開発を検討している。また研究チームは、熱処理した魚の鱗が他の有害化学物質を吸着できるかどうかについても研究する予定だ。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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