シンガポールの南洋理工大学(NTU)は、シンガポールと米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究技術アライアンス(SMART: Singapore-MIT Alliance for Research and Technology)とNTUの共同研究チームが泥炭地(ボグ)に蓄えられた炭素量を正確に測定する新手法を開発したと発表した。3月14日付け。
(出典:NTU)
SMARTとNTUによる研究チームの開発した手法は、衛星データを用いて、ボグともよばれる隆起した泥炭地の三次元形状を導き出し、炭素の含有量を算出することができる。これにより、現地でのサンプリングの必要性が減少する。
泥炭地に蓄えられた炭素量の測定は、政府や政策立案者がこれらの土地を農業、工業、都市用途に転用する際の環境への影響を査定するために有用である。特に、泥炭地の排水により発生する炭素排出量を理解することは重要だ。世界的に、農業用地としての泥炭地の排水は大量の二酸化炭素を放出し、壊滅的な火災のリスクを高める。乾燥した泥炭地は非常に可燃性が高く、特に東南アジアなどのように熱帯気候で乾季がある地域においては、容易に火災を引き起こし、煙霧が繰り返し発生し大気汚染の原因となっている。東南アジアは世界の熱帯泥炭地の約半分、およそ2,300万ヘクタールの泥炭地を抱えている。
泥炭地は世界の陸地表面のわずか3%を占めるのみだが、陸地生態系の中で面積当たりの炭素量が最も高い。泥炭地の理解は、その大量の炭素在庫を保護・回復するために重要である。泥炭地の回復には、再湿化という手法が用いられ、これは自然に基づく気候変動対策として最も有望な解決策の1つである。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部