2024年05月
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ビール醸造の残渣から80%以上のタンパク質抽出方法を開発 シンガポール «動画あり»

シンガポールの南洋理工大学(NTU)は、食品科学技術プログラムの研究者らが、ビール醸造後の穀物残渣である醸造用使用済み穀物(BSG)に含まれる利用可能なタンパク質を80%以上抽出する方法を開発したことを発表した。4月11日付け。

BSGとは、ビール醸造後の麦芽の固形残渣である。ビール醸造産業における最も重要な副産物であり、廃棄物全体の85%を占めている。世界全体では、年間約3,640万トンの使用済み穀物が生産され、埋立処分や焼却処分され、温室効果ガス排出の原因となっている。

BSGからのタンパク質抽出方法は、まず穀物を殺菌してから、東南アジアで食べられる大豆ベースの発酵食品テンペを製造するために一般的に用いられる食品用真菌Rhizopus oligosporusを使用し、3日間発酵させる。このプロセスにより、BSGの複雑な構造が分解され、タンパク質が抽出しやすくなる。発酵させたBSGを乾燥、粉末化の後、遠心分離機を用いて、タンパク質成分を抽出する。

BSGタンパク質は人間が摂取しても安全で高品質であるため、サプリメント化や植物性食品に添加し、タンパク質含有量を増加するなどの目的で使用できる。それらの直接利用だけではなく、これらのプロセスを経ることで、廃棄物や二酸化炭素排出量の削減にも役立つと研究者らは指摘している。またこれらのタンパク質には抗酸化物質が豊富に含まれており、皮膚の保護や、ボディローションや保湿剤のような化粧品の保存期間を延ばすことにも使用できる。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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