シンガポールの南洋理工大学(NTU)は4月8日、同大学リーコンチアン医科大学(LKCMedicine)の研究チームが、幹細胞から培養したミニ臓器である腎臓オルガノイドを用いて、遺伝的疾患の1つ、多発性嚢胞腎(PKD)の代謝異常に関する新たな知見を得たことを発表した。
LKCMedicineの研究チームメンバー
PKDは、あらゆる人種で1,000人に1人が罹患する遺伝的疾患の1つである。PKD患者は50~60代にかけて末期腎臓病に移行することが多く、標準的な治療法は透析か腎移植であるが、透析は患者の生活の質を著しく低下させ、移植腎は入手が困難である。他の選択肢としては、米国の食品医薬品局(FDA)が承認したトルバプタンという薬があるが、非常に高価で、肝臓に深刻な副作用があることがわかっている。
LKCMedicineの研究チームは、PKD患者に対するより効果的な治療法を開発するため、PKD患者由来の皮膚細胞を用いた腎臓オルガノイドを培養し、マウスに移植することで、PKDに関する理解を深めようと研究を行った。その結果、オートファジー(細胞代謝)を高めることで、腎臓オルガノイドの嚢胞の重症度を軽減できるという証拠を発見した。
多発性嚢胞腎オルガノイドの免疫蛍光染色のイメージ
(出典:いずれもNTU)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部