2024年05月
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不摂生な食生活とがんリスク上昇の関係を解明 シンガポール国立大学

シンガポール国立大学(NUS)は4月12日、研究チームが、食生活の乱れとがんリスクの関係、そして糖尿病などの病気との関係についての研究成果を発表したことを伝えた。研究成果は学術誌Cellに掲載された。

NUSの研究者による新しい研究では、体内でグルコースをエネルギー生産のために分解する際に生成されるメチルグリオキサールが、がんの発生の初期警告サインであるDNAへのダメージを引き起こすことが明らかになった
(提供:NUS)

この研究は、NUSがん科学研究所(CSI Singapore)やヨンローリン医学部傘下のNUSがん研究センター(N2CR)の研究者とシンガポール科学技術研究庁(A*STAR)の関係者によって行われ、得られた知見は、健康的な加齢を目的としたがん予防戦略推進への活用が期待されている。

研究チームは、両親からがん遺伝子BRCA2の欠損コピーを受け継ぎ、乳がんや卵巣がんの発症リスクが高い患者を対象に研究を行った。その結果、患者の細胞は、グルコースを分解してエネルギーを得るときに生成されるメチルグリオキサールの影響に敏感であることが明らかになった。この研究から、メチルグリオキサールがDNAにダメージを引き起こすことでがん発症につながる可能性が示された。

また、研究チームは、BRCA2の欠損コピーを持たずともメチルグリオキサールのレベルが通常より高くなる可能性のある人々についてもがん発症のリスクが高い可能性を示した。これは、例えば、肥満や食生活の乱れに関連する糖尿病や糖尿病予備軍の患者が該当するという。

CSI Singaporeの所長で研究を率いたアショク・ヴェンキタラーマン(Ashok Venkitaraman)教授は、「メチルグリオキサールは、血液検査(HbA1C)で容易に検出でき、マーカーとして使用できる可能性があります。さらに、メチルグリオキサール濃度は、通常薬と適切な食事で制御できるため、がんの発生に対する積極的な対策への道が開かれます」と語った。

さらに論文の筆頭著者であるN2CRのリー・レン・コン(Li Ren Kong)博士は、「エネルギー消費経路とがんの発症を結びつける深いメカニズムについて発見しました。これらの知見は、がんリスクの管理における食事と体重管理の影響に対する認識を高めます」と述べた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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