シンガポールの南洋理工大学(NTU)は4月15日、同大学の研究者が率いる国際研究チームが、アラビカコーヒーノキ(Coffea arabica)をコーヒーノキ葉さび病から守る画期的な研究を行ったことを発表した。研究成果は学術誌Nature Geneticsに掲載された。
国際研究チームを率いてアラビカ種(写真)と近縁2種のコーヒーのゲノムをマッピングした、NTU生物科学部のヤルコ・サロヤルヴィ(Jarkko Salojarvi)助教
アラビカコーヒーノキにより生産されるアラビカ種コーヒーは、経済的に最も重要なコーヒーであり、世界のコーヒー製品の60%を占める。しかしながら、アラビカ種コーヒーは病気に弱く、米国国際開発庁は、2012~2014年にかけて中南米でコーヒーノキ葉さび病が発生し、約10億米ドルの経済的損害をもたらしたと推定している。
NTU生物科学部のヤルコ・サロヤルヴィ(Jarkko Salojarvi)助教が率いる研究チームは、アラビカコーヒーノキとその近縁2種のゲノムを詳細にマッピングし、コーヒーノキ葉さび病に耐性を持つ植物に共通する遺伝子を特定した。また、ゲノムデータにより、コーヒー植物における他の有用な形質の特定にもつながった。
今回の発見は、コーヒー愛好家の日常を守り、高品質なコーヒーを維持する道を開くだけではなく、何百万人もの労働者を雇用するコーヒー産業を支えることにも繋がる。
サロヤルヴィ助教は、「3種の植物に対する高品質なゲノム配列の決定は、コーヒーノキ葉さび病の抵抗に関連した候補遺伝子配列の評価とともに、真菌のような病原菌による病気に強く、変化への適応性が高いアラビカ種の新品種を育てるための礎になります」と、研究の意義について述べた。
アラビカ種コーヒー
(出典:いずれもNTU)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部