2024年05月
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植物へのストレスをリアルタイムに解読、多重化センサーを開発 シンガポールとMIT

シンガポールと米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究技術アライアンス(SMART: Singapore-MIT Alliance for Research and Technology)は4月23日、SMARTの破壊的・持続的精密農業技術(DiSTAP)学際研究グループ(IRG)がシンガポールのテマセク生命科学研究所(TLL)とMITと共同で、植物のストレス応答の初期段階におけるサリチル酸(SA)のリアルタイムモニタリングを可能にしたナノセンサーを開発し、他のセンサーと組み合わせて植物ホルモンプロファイルや化学シグナルを同時に読み取る方法を開発したと発表した。研究成果は学術誌Nature Communicationsに掲載された。

SAは、植物の成長や発育に関わり、病原菌や温度、乾燥、塩分、金属、紫外線、浸透圧に対してストレス反応を示す植物ホルモンである。ストレスを受けた植物の内部で起こる複雑な生理に関する研究は、気候変動を含むさまざまなストレスに強い作物を栽培する上で不可欠である。

今回開発した多重化センサーの能力を実証するため、研究者らはSAセンサーを過酸化水素(H2O2)センサーと組み合わせ、パクチーなどの植物に、光の変動や極端な暑さ、病原菌の攻撃、さらには機械的な損傷(虫刺されを模倣した植物への物理的損傷)を含むさまざまなストレスを与えた。その結果、ストレスのタイプごとに、SAとH2O2の生成応答にユニークなパターンがあることが分かった。この発見は、植物がストレスに対して、どのようにコミュニケーションを取り、対抗しているのかを知ることに役立ち、回復力を高めた作物の開発への道を開く。SMART DiSTAPの主任研究員で論文の著者であるマーヴィン・チュンイ・アン(Mervin Chun-Yi Ang)博士は「この画期的なテクノロジーは、植物のストレス検出と診断における大きな飛躍を意味します」と語る。

SMART DiSTAPは現在、植物のストレスを包括的に把握するため、さまざまなセンサーの多重化に取り組む。将来の産業用途として、多重化されたナノセンサーを栽培する作物内の特定の植物に取り付け、環境変数や病原体、その他のストレスを監視することで、作物全体の状況を把握し、生育に関するリアルタイムデータを農家に提供することが挙げられる。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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