シンガポール国立大学(NUS)は、同学の研究者がバイオエコノミーの可能性を高めるため、技術標準と指標を開発する必要がある10の重要分野を特定したグローバルタスクフォースレポートの作成に共同執筆者として貢献したことを発表した。5月8日付け。
バイオエコノミーとは、化石燃料に依存する産業から、再生可能な資源を基盤とする産業への転換を意味する。例えば生物を利用し新製品を生み出すこともその1つである。さらに、酵素や代謝経路のような生体システムの構成要素を取り扱う場合、エンジニアリング・バイオロジーや合成生物学の分野が該当する。
一方で、国際的に合意されたバイオエコノミーの言葉の定義や基準に関するコンセンサスは存在しない。十分な標準化や基準がなければ、大きな問題が生じる可能性もある。NUSが関与する国際的な取り組みは、こうした状況を変えようとしており、NUSヨンローリン医学部の臨床と技術の革新のための合成生物学(SynCTI)ディレクターであるマシュー・チャン(Matthew Chang)准教授はバイオエコノミーの推進を目的としたエンジニアリング・バイオロジーの指標と技術標準に関するグローバル・タスクフォースの5人の主要メンバーのアジアから唯一の代表者である。
このタスクフォースは、バイオエコノミーの継続的な拡大を可能にし、分野全体のパフォーマンスを向上させる適切な技術標準と指標を定めることを目的とする。今回発表されたレポートは、2024年5月7日、米国カリフォルニア州で開催されたシンバイオベータカンファレンスで公表された。レポートでは、技術標準や指標の開発が必要とされる6つの技術的分野と4つの非技術的分野を特定している。
シンガポールは研究と協力の国際的なハブとして、このレポートに貢献しており、チャン准教授は、「この取り組みは、合成生物学におけるシンガポールの地位を強化し、地域の標準化イニシアチブのリーダーとしての地位を確立するものです。シンガポールは、国内のエンジニアリング・バイオロジーのレベルを強化することで、革新的な指標、標準物質、標準化された方法とプロトコルの開発と試験を主導することができます」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部