シンガポールの南洋理工大学(NTU)は6月18日、NTUが主導する国際研究チームが、消化器専門医は人工知能(AI)医療ツールを信頼し、受け入れているとする調査結果を報告したと発表した。研究成果は学術誌JMIR AIに掲載された。
(出典:NTU)
AIは医療のあらゆる側面に浸透しており、正確な診断やより良い管理決定を通して、患者と医療システムの双方に転帰の改善を行っている。しかしながら、臨床の現場でAI技術の導入を成功させるには、医療従事者のAIに対する信頼と理解が欠かせない。
研究チームは、アジア太平洋地域で働く165人の消化器専門医と消化器外科医を対象に調査を行い、大腸ポリープ(がん化する可能性のある大腸の良性腫瘍)の診断と評価において、その8割がAI搭載ツールの使用を受け入れ、信頼していることを明らかにした。また、内視鏡検査を受診し腸内で見つかったポリープを切除するかどうかの判断においては、7割の医師がAI支援のアプリケーションを受け入れ、信頼すると回答した。さらに研究チームは、男性医師と女性医師、公的医療機関と私的医療機関、大規模病院と小規模診療所の間で、AIに対する医師の受容レベルに差がないことを明らかにした。
一方で、医師の経験年数が極めて重要な要素であることも分かった。一般的に若い医師は臨床判断において、テクノロジーの利用に寛容であると予想されるが、調査では臨床経験10年未満の消化器内科医は、10年以上の医師より、AIを利用した医療ツールのリスクを高く認識していた。
今回の調査結果は、医師がAIを受け入れることにおいて、何が影響するのか、より多くの研究が必要であることを浮き彫りにした。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部