2024年08月
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量子フォトニクスデバイス開発にグラフェン利用の可能性 シンガポール

シンガポールの南洋理工大学(NTU)は7月25日、同大学の研究者らが、ナノメートルサイズのグラフェン柱が並んだ構造を作成し、グラフェン柱の端に不均一なひずみを加えたところ、これまで見られないタイプの第2高調波発生(SHG)が確認されたと発表した。研究成果は学術誌Nature Communicationsに掲載された。

グラフェンナノピラーにひずみが生じると入射した光の2倍の周波数を持つ光が発生する

SHGは、物質に高強度のレーザー光などを入射したとき、入射した光の2倍の周波数を持つ光が発生することを指し、幅広い光学素子に応用されている。原子1個分の厚さしかないグラフェンは、小型フォトニック非線形デバイスの開発において、大きな期待が寄せられている。しかし、グラフェンの原子は左右対称に配置されるため、SHGが阻害される。

グラフェンの対称性を破るため、NTU電気電子工学科のナム・ドングク(Nam Donguk)准教授とルー・クンツェ(Lu Kunze) 博士課程大学院生を中心とする研究者らは、グラフェンを用いて、ナノピラーと呼ばれる大きさを揃えたナノサイズの柱を配列し、その端に不均一なひずみを加えることで、SHGを発生させることに成功した。

走査型電子顕微鏡で見たグラフェンナノピラー
(出典:いずれもNTU)

この新しいSHGは、光学やフォトニクス用途で一般的に使用される六方晶窒化ホウ素で見られるSHGより30%強力だった。また、絶対零度に近い超低温の条件では、室温の約50倍の強度を示した。ナム准教授によると、この発見は量子フォトニクスデバイスの開発にグラフェンを利用する新たな可能性を開くものだという。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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