米国科学振興協会(AAAS)のオンラインニュースサービス「EurekAlert!」は7月30日、米ローワン大学、シンガポールの南洋理工大学(NTU)、米ペンシルバニア大学の研究者らが共同で主導した研究から、気候変動の影響で東南アジアにおける熱帯低気圧の発生から消滅までの動きが大きく変化していることが明らかになったと発表した。この研究成果は、Natureのパートナー誌であるClimate and Atmospheric Scienceに掲載された。
(出典:シンガポール南洋理工大学)
研究チームは、19世紀から21世紀末まで6万4000件以上の過去および未来のモデル化された熱帯低気圧を分析した。その結果、東南アジアにおいて、熱帯低気圧が海岸線により近い場所で発生するようになり、陸地により長く停滞するようになっていることが明らかになった。
今回の研究では、人為的なCO2排出量の増加予測や地球温暖化への影響といった要因を操作してコンピューターシミュレーションを行うことで、温暖化が熱帯低気圧に与える影響も明らかにした。研究チームは、温暖化によって海水の温度が上昇するほど、熱帯低気圧がより多くのエネルギーを海水から得られるようになると説明している。
主執筆者であるローワン大学のアンドラ・ガーナー(Andra Garner)助教授は、「東南アジアの海岸線は人口密度が非常に高い。人口の増加が続き、暴風雨の被害がより大きくなっていることを考えると、深刻なリスクがある」と指摘した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部