タイ国立科学技術開発庁(NSTDA)は8月7日、国立遺伝子生命工学研究センター(BIOTEC)およびタイのカセサート大学と共同で、ShrimpGuard(養殖エビの抗菌剤耐性ビブリオ症を克服するためのファージ関連製剤の開発)プロジェクトを開始したことを発表した。
(出典:NSTDA)
このプロジェクトはカナダの国際開発研究センター(IDRC)と英国の保健・社会福祉省から4160万5962タイバーツの資金提供を受け、2024年4月~2026年12月までの32カ月間にわたり行われる。
タイでは、エビの90%以上が国内で養殖されており、かつては世界第2位のエビ生産国として知られていた。エビ養殖業は、経済成長、社会発展、食料安全保障において重要な役割を果たしてきたが、近年では、病気の蔓延や輸出禁止、不利な貿易政策の影響で、市場シェアの半分以上を失った。特に、エビの主な病気であるビブリオ症を制御するために広く使用されている抗菌薬が、薬剤耐性(AMR)の発生を招き、業界の持続可能性に大きな課題をもたらしている。
プロジェクト責任者のカラヤ・スリトゥンヤルックサナ・ダンティップ(Kallaya Sritunyalucksana-Dangtip)博士は、「ShrimpGuardは、有害なビブリオ菌を標的とするバクテリオファージと、エビの健康を促進する免疫強化剤を組み合わせたものです。これにより、ビブリオ症に効果的に対抗しながら、抗菌薬の使用を減らすことができます」と述べ、AMRへの対策について説明した。バクテリオファージは、細菌に感染して増殖するウイルスで、土壌や水などさまざまな環境に存在し、抗菌薬の代替手段として科学研究や医療で利用されている。
研究チームは、ShrimpGuardの使用を最適化するために、実験データをもとにさまざまな気候条件下での使用方法を推奨する予定である。また、AMRとShrimpGuardに関するセミナーや会議を含む教育およびアウトリーチプログラムも実施され、ShrimpGuardが多くのエビ養殖関係者に採用され、その有効性が最大限に発揮されることが期待されている。また、農家や飼料工場は、研究開発(R&D)パートナーや技術ユーザーとしてコンソーシアムに参加することができる。NSTDAのスキット・リムピジュムノン(Sukit Limpijumnong)総裁は、「ShrimpGuardは持続可能なエビ養殖における大きな前進です。従来の抗菌薬への依存を減らすことで、AMRの問題を軽減し、エビ養殖業の長期的な存続へ繋がります」と述べ、プロジェクトの重要性を強調した。
ShrimpGuardの導入が成功すれば、タイおよび東南アジア地域のエビ養殖産業における世界的な競争力が強化され、タイは持続可能な水産養殖の実践におけるリーダーとしての地位を確立することになるだろう。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部