2024年10月
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精密農業を高度化、植物用電子スキンとデジタルツイン監視システム開発 シンガポール国立大学

シンガポール国立大学(NUS) は9月4日、植物の温度、湿度、栄養状態を継続的かつ非侵襲的にモニタリングできる初の完全有機素材のセンサーである植物用電子スキンと、収集したデータをリアルタイムで視覚化するデジタルツイン植物モニタリングシステムを開発したことを発表した。研究成果は科学誌Science Advancesに掲載された。

NUSデザイン工学部電気・コンピューター工学科リー・チェンクオ(Chengkuo Lee)准教授(右)ら研究チーム

植物用電子スキンとデジタルツイン植物モニタリングシステムは作物育種と精密農業における効率的な意思決定に利用できる。精密農業は、センサーを用いて、温度、湿度、水分、栄養レベルなどのデータを収集する新しい分野だ。これらのデータは作物の収穫量を最適化するために役立ち、農家は熱や降雨量の増加などの環境の変化に迅速に対応できるようになる。

NUSの研究チームは、市販の有機材料を使用して、生体適合性、透明性、伸縮性を備えた植物電子スキンを開発した。この電子スキンは厚さ4.5µmで、髪の毛の約10分の1の太さである。また、導電層が透明な基板層に挟まれた構造のため、光の85%以上を透過し、植物の光合成に必要な光を遮ることなく、温度や歪みなどの重要なパラメータを測定する。この技術により、植物の成長を妨げることなく、熱や水分不足などのストレス条件下でも信頼性の高いモニタリングが可能になった。

革新的な植物用電子スキンは、超薄型で透明なため、植物の葉の表面にシームレスに装着でき、温度やひずみなど主要なパラメータが収集でき、植物の自然なプロセスを妨げたり、物理的な損傷を与えることなくデータを取得することが可能となる

さらに、この電子スキンから収集されたデータをリアルタイムで視覚化するために、デジタルツインシステムも開発された。このシステムは、植物の物理的状態をデジタル上で再現し、葉の表面温度の変動をカラーで視覚化するなど、即座に環境の変化を把握できる。これにより、新しい植物品種の特性分析や、作物育種の効率向上にも役立つ。

電子スキン上のセンサーから収集されたデータは、実際の植物の物理的状況を反映する一連のコンピューター・ビジュアライゼーションからなるデジタルツインを作成するために使用される
(提供:いずれもNUS)

NUSデザイン工学部電気・コンピューター工学科のリー・チェンクオ(Chengkuo Lee)准教授は「葉の表面温度を測定できることは、従来の温度センサーにはないユニークな特徴です。長期間の熱曝露による葉の熱ストレスを緩和する方法を理解するためのデータを収集することができ、経済的に価値のある作物の精密農業に有益です」と語った。今後は、湿度や化学センサーを統合し、デジタルツインシステムと連携させて、さらに包括的なモニタリングが可能になる予定である。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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