シンガポール国立大学(NUS)は9月6日、同大学と中国の精華大学の研究チームが1細胞ごとにRNAの種類と量を検出するためのシングルセルRNAシーケンシング(scRNA-seq)データを解析する新たな手法を開発したと発表した。研究成果は学術誌PNASに掲載された。
開発された手法は、データ解釈の精度とスピードを向上させ、がんやアルツハイマー病の研究を含めた生物医学研究を加速させる。この革新的なフレームワークは、多様体適合によるシングルセル解析(scAMF)と呼ばれ、NUS理学部統計データサイエンス学科のジガン・ヤオ(Zhigang Yao)准教授が率いる科学者チームによって開発された。
scAMFは、遺伝子発現データが測定される高次元空間内に低次元多様体を適合させる高度な数学的手法を採用する。これにより、scAMFは重要な生物学的情報を保持しながら、ノイズを効果的に低減し、細胞の種類や状態をより正確に特徴づける。
ヤオ准教授は、今回の研究について、「私たちのアプローチは、高次元空間内に低次元多様体を当てはめることで、scRNA-seqデータのノイズを効果的に除去します。この手法により、細胞タイプの分類の精度とデータの視覚化が大幅に向上します」と説明した。
scAMFは、データ変換、共有された最近傍メトリクスを使用した多様体適合、教師なしクラスタリング検証を組み合わせて利用する。scAMFは、他の手法と比較し、ノイズ除去やクラスタリング精度、生物学的情報の保存、計算効率、視覚化、多様なデータセットにわたる堅牢なパフォーマンスなど、いくつかの点で優れた性能を発揮する。scAMFはシングルセル解析における強力なツールとして、これまで隠されていた細胞の不均一性や希少な細胞集団を明らかにすると期待される。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部