シンガポール国立大学(NUS)は10月2日、インターネット上に潜む虚偽情報対策のための複数のツールを開発したことを発表した。今回の研究は、同大学が進める学際的プログラムInformation Gyroscope(iGyro)のもと実施された。iGyroは、幅広い分野の40名の研究者が参加した5年間の研究プログラムで、その柱の一つが虚偽情報対策だ。
インターネットが日常生活の一部となり、利便性が向上する一方で、生成型人工知能(AI)の普及が偽情報の拡散を助長している。この問題は21世紀最大の課題の一つとなっている。虚偽情報(誤情報、偽情報、悪意のある情報)は、人や組織に悪影響を及ぼし、社会の分断を招くこともある。
iGyroは、デジタル情報の脆弱性を特定し、ユーザーのデジタルレジリエンスを高め、信頼できる情報への関与を促す戦略を開発することを目指している。iGyroチームは、人間の行動を理解し、形成することを研究の中心に据え、情報の生成から消費までのデジタルエコシステムの様々な段階を包括的に理解することを目指している。
チェン・ツハン(Chen Tsuhan)教授の率いるチームは今回、本物の画像と虚偽のキャプションを組み合わせた、文脈外の偽情報が拡散されている問題に対するSNIFFERという新しいマルチモーダル大規模言語モデルや、信頼性のあるファクトチェックツールであるQACheckシステムを開発した。これらの虚偽情報対策ツールに加え、研究チームは世界各国の虚偽情報対策法の変遷を可視化するインタラクティブマップも発表した。研究チームはこのインタラクティブマップに基づき、虚偽対策として各国が採用しているさまざまなアプローチの有効性について、より詳細な分析を行いたい考え。
チェン教授は、「SNIFFERやQACheckのような革新的なツールを開発や、虚偽情報に関する世界の法制度を分析を通じて、信頼できるデジタルエコシステムの構築に貢献したいと考えています」と語っている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部