シンガポールの南洋理工大学(NTU)は11月22日、NTUの研究者が加熱や冷却によって色が変わる新しい半導体材料を生成したと発表した。研究成果は学術誌Journal of the American Chemical SocietyとNTUの研究・イノベーション誌Pushing Frontiersに掲載された。
NTUの新しいペロブスカイト
(出典:NTU)
研究者らが開発したのは、2次元ハライドペロブスカイトとして知られる半導体材料だ。この材料は、太陽電池や発光ダイオードなどのデバイスに利用される。論文の筆頭著者であり、NTUの研究員であるアヤン・ジュメケノフ(Ayan Zhumekenov)博士は、メチルアンモニウムベースのペロブスカイト結晶に無毒の溶媒であるジメチルカーボネートを混ぜ込む手法で、新たなペロブスカイトを生成した。
研究者らは、結晶構造内のメチルアンモニウムとジメチルカーボネートの比率を調整することで、結晶構造のバンドギャップを調整できることを発見した。電子が結合状態から脱して導電性になるために必要なエネルギー量を意味するバンドギャップは、材料の色も決定する。このバンドギャップの幅を設計する能力は、ペロブスカイトの用途にとって重要である。新しい2次元ハライドペロブスカイトは、切り替え可能な挙動を示す。
研究者らは、ペロブスカイトの1つが2つの色の状態に切り替えることができることを発見した。これは、結晶を80℃に加熱するとオレンジ色から赤色に変化し、室温まで冷やすとオレンジ色に戻る。さらに、この変色の反応を25サイクル繰り返すことが可能であることを実証した。温度の変化に伴って物質の色が可逆的に変化するサーモクロミックスイッチング現象は、異なる温度で色が変化するスマートコーティングや感熱インクなどへの応用が考えられる。研究者らは、このイノベーションが電子と光の組合せによる応用分野であるオプトエレクトロニクスをはじめとした技術的応用への道を開くことを期待している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部