2025年01月
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ナノ粒子を用いて微粒子や細菌を除去する空気清浄フィルターを開発 シンガポール

シンガポールの南洋理工大学(NTU)は、NTUの研究者らが絹糸の主成分であるシルクタンパク質とナノ粒子を用いて、微粒子や細菌から2重に保護する機能を備えた空気清浄フィルターを開発したと発表した。研究成果は学術誌ACS Applied Nano MaterialsChemical Engineering Journalと、NTUの研究・イノベーション誌Pushing Frontiersに掲載された。

酸化第一銅の粒子(写真は電界放出型走査電子顕微鏡で見たもの)を布地にコーティングしたところ、その粒子の平均殺菌効率は93%以上であった。

大気汚染は人間にとって有害である。汚染された空気中にはPM2.5と呼ばれる微粒子が含まれており、肺や心臓の疾患を引き起こす可能性がある。また、空気中に存在する細菌も病気の原因になり得る。しかしながら、既存の多くのフィルターは、PM2.5の除去や殺菌を行うことはできない。これらの問題に対処するため、研究者らは静電効果を持つ硝酸ランタンのナノ粒子をシルクタンパク質に添加して作成したフィルターの空気ろ過の実験と、酸化第一銅の粒子の殺菌効果の実験を行った。これら2つの結果を組み合わせて、物理的に強く、生分解性があり、汚染物質を効果的にろ過し、細菌を除去する空気清浄フィルターの開発に成功した。

電界放出型走査電子顕微鏡写真。布地に付着した損傷した肺炎桿菌を示す。

NTUと中国人民大学の研究者らが報告する硝酸ランタンと酸化第一銅ナノ粒子を配合したシルクフィブロインタンパク質フィルターは、汚染された空気中の細菌やさまざまな大きさの微粒子(PM2.5よりも小さい0.3~10µmの粒子)を99.9%除去した。また、このフィルターは45秒で多剤耐性菌の99.9%を死滅させた。研究者らは、このフィルターを用いた空気清浄機を商品化し、細菌除去のために中国の病院で使用している。また大気汚染物質の除去のため、病院の利用以外にも使用されている。

NTUと中国人民大学が共同開発した硝酸ランタンと酸化第一銅ナノ粒子を用いた市販のシルクフィブロインタンパク質フィルター
(出典:いずれもNTU)

(2024年12月10日付発表)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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