インドネシア国家研究イノベーション庁(BRIN)は1月16日、インドネシアでも感染例が確認されているヒトメタニューモウイルス(HMPV)への理解を深めることを目的にジャカルタでメディア・ラウンジ・ディスカッション(MELODI)を開催することを発表した。
HMPVは中国で感染者が増加している情報が出回り、社会的な話題となっている。HMPVの初期症状は、咳、鼻水、鼻詰まり、軽い発熱が多く、特に小児や乳幼児では息切れや発熱を伴うこともあり、気管支炎や肺炎に移行する場合もある。HMPVウイルスは、感染者の咳、くしゃみ、会話による飛沫を介した感染のほか、直接接触や表面汚染によっても感染することが知られている。BRIN前臨床・臨床医学研究センターのテリー・プルナマサリ・アグス(Telly Purnamasari Agus)主任研究員は「ドアの取っ手やテーブルなどの汚染された表面に触れた場合、その手で目や鼻、口に触れると感染が起こります」と説明する。
HMPVはサブタイプAとサブタイプBのグループに分けられ、AはBに比べて重症の呼吸器感染症を引き起こすことがあり、しばしば集団発生を伴う。Bは軽い感染症を引き起こす傾向があり、特定の季節に流行が見られる。テリー氏によると、インドネシアで流行しているHMPVウイルスの特徴を理解するためには、どちらのグループのものなのか、ウイルスの遺伝子変異はあるのかなど、遺伝学的研究を行う必要があるという。
テリー氏は「現在のところHMPVを予防する特定のワクチン接種はありません。しかし、手指衛生の維持、マスクの着用、ソーシャルディスタンスの確保、健康の維持など、いくつかの効果的な予防措置を講じることができます。HMPV予防の実施には社会のあらゆる層の協力が必要であり、公教育が重要です。世界保健機関(WHO)や米疾病予防管理センター(CDC)のような国際機関と研究協力を行うことで、HMPVに関する世界的な傾向を把握し、国境を超えた感染症の広がりや影響を緩和することができます」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部