2025年03月
トップ  > ASEAN科学技術ニュース> 2025年03月

東南アジアの泥炭地とマングローブ林が炭素排出削減に大きく貢献 シンガポール

シンガポール国立大学(NUS)は2月10日、NUSの研究者らが、東南アジアの泥炭地とマングローブ林を保全・回復することで、この地域の土地利用の炭素排出量の50%以上を軽減できるとする報告を行ったと発表した。研究成果は学術誌Nature Communicationsに掲載された。

泥炭地とマングローブ林の生態系は、炭素の90%以上を土壌が蓄えており、世界で最も効率的な自然の炭素吸収源である。しかしながら、土地利用の変更によってその生態系が破壊されたり乱されたりすると、大量の炭素を大気中に放出し、排出削減目標の達成を大きく妨げることになる。また、エルニーニョ現象に関連するような乾燥期の泥炭地の劣化は、大量の炭素排出につながるだけでなく、地域的な煙霧現象の一因となり、シンガポールを含めた国々の大気質に影響を与える。

これらの生態系は、東南アジアの陸地のわずか5%しか占めていないにも関わらず、炭素排出削減において大きな役割を果たしており、ASEAN諸国全体の気候目標達成に不可欠である。この研究は、NUSの研究チームがシンガポールの南洋理工大学(NTU)とオーストラリアのジェームズクック大学(JCU)の協力を得て行い、泥炭地とマングローブ林の保全と回復が気候変動対策に大きく貢献することを強調した。

研究の責任者で論文の著者であるマッシモ・ルパスク(Massimo Lupascu)准教授は、「東南アジアの炭素密度の高い泥炭地やマングローブ林を保全・回復すれば、CO2換算で年間約770Mtの炭素を削減できます。これは、2023年のマレーシアの温室効果ガス排出量のほぼ2倍に相当します」と述べた。

また、この研究の筆頭著者であり、NUS在籍時にこの研究を主導したJCUのシギット・サスミト(Sigit Sasmito)博士は、「東南アジアは、泥炭地とマングローブ林の保全に投資し、費用対効果の高い自然環境に基づく解決策を展開することで、世界をリードすることできます。これは気候変動と生物多様性に対して永続的な利益をもたらします。泥炭地とマングローブ林の生態系は、その規模をはるかに超える気候緩和効果を発揮し、地球の気候危機に対処するための最も拡張性が高く、影響力のある自然の解決策の1つを提供します」と述べた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る