シンガポールの南洋理工大学(NTU)は4月2日、シンガポールのバイオミミクリー設計企業のbioSEA社と共同で、エネルギーを使用せずに建物を冷却できる菌類タイルを開発したと発表した。
NTUとbioSEA社の研究メンバー
(出典:NTU)
この新素材は、菌類の根のネットワークである菌糸体と竹の削りくずを原料に作られたものだ。菌糸体結合複合材は、従来の断熱材である膨張バーミキュライトや軽量膨張粘土骨材と比較してもエネルギー効率に優れることが過去の研究で示されている。
実証済みの断熱特性に加えて今回開発された菌類タイルには、タイル表面に凹凸のあるシワ模様が施されている。これはゾウの皮膚構造の熱調整機能を模倣したものだ。ゾウは汗腺を持たない代わりに、皮膚のシワや溝を利用して体温を調節しており、エネルギーを使わずに建物の温度上昇を抑える手段として期待されている。
これまでに実験室での試験によりこのタイルが有効に熱を調節できることが確認されており、今後は生産規模の拡大と、建物外壁での実用試験が予定されている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部