シンガポール国立がんセンター(NCCS)は4月9日、NCCSとシンガポール総合病院(SGH)の研究が、シンガポールの50歳未満の成人の大腸がんが増加していることを明らかにしたと発表した。研究成果は学術誌JMIR Public Health and Surveillanceに掲載された。
この研究では、1968~2019年にシンガポールがん登録簿に登録された5万3044人の大腸がん患者の症例の分析が行われた。これらの患者のうち、6183例が若年発症大腸がんと診断された20~49歳の患者であった。若年発症大腸がんの年齢別発生率は、人口10万人あたり1968年の5人から1996年の9人に増加し、年率2.1%で上昇していることが明らかになった。
このがん登録簿のデータは、人口統計学的違いも明らかにした。マレー系は、すべての年齢層で大腸がんの発生率が急速かつ持続的に上昇し、中華系は、20~49歳までの年齢に直腸がんのみの増加傾向を示した。大腸がんは、シンガポールの男性に最もよく見られるがんであり、女性では乳がんに次ぐ2番目に多いがんであった。
SGHの大腸外科のコンサルタントであるリオネル・チェン(Lionel Chen)博士は、若年発症大腸がんが年間に診断される大腸がん全体の10~12%を占め、患者の約10人に1人は50歳未満である可能性があると述べた。また、NCCSの腫瘍内科のシニアコンサルタントであるダーン・チョン(Dawn Chong)准教授は、若年層で大腸がんと診断された患者には遺伝性疾患の可能性があると述べた。これには、結腸と直腸に多数のポリープが発生することを特徴とする家族性大腸ポリポーシス大腸がんや家族性非ポリポーシス大腸がんが含まれる。
専門家は、大腸がんのリスクを低下させるためには、果物や野菜、全粒穀物が豊富なバランスの取れた食事を取ることや、定期的に運動することなど、健康的なライフスタイルを推奨する。さらに、赤肉や加工肉の摂取を制限し、過度なアルコール摂取を避け、喫煙を止め、健康的な体重を維持することが重要であるとした。チェン博士は、「大腸がんの家族歴がある場合は、医師と早期検診について相談することを検討するのが良いと思われます」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部