2025年05月
トップ  > ASEAN科学技術ニュース> 2025年05月

米国の相互関税に対抗しASEANおよび他国と連携強化 インドネシア

インドネシア政府は4月14日、米国による相互関税政策を受けて、ASEAN諸国およびその他の主要貿易相手国との連携強化、ならびに規制緩和策や国内産業支援による包括的な対抗措置を講じる方針を明らかにした。

4月14日にジャカルタで貿易関税に関する米国との会談について声明を発表するアイルランガ・ハルタルト(Airlangga Hartarto)調整相(経済)(中央左)
ANTARA FOTO/Akbar Nugroho Gumay(出典:Indonesia.go.id)

米国が発動を表明した相互関税政策により、インドネシアは対米輸出製品に32%の関税を課される状況に直面している。アイルランガ・ハルタルト(Airlangga Hartarto)調整相(経済)は、ASEAN諸国と連携し迅速に対応する必要性を強調し、2025年のASEAN議長国マレーシアのアンワル・イブラヒム(Anwar Ibrahim)首相を訪問すると表明した。

また、スリ・ムルヤニ・インドラワティ(Sri Mulyani Indrawati)財務相は、「米国の関税政策は、世界貿易機関(WTO)やブレトンウッズ体制といったルールに基づく世界貿易体制を損なうものです」と指摘。ASEAN財務相会議では、米国の政策に対する対応の方針が協議され、3兆米ドルの経済規模と6億5000万人超の人口を擁するASEANの協力強化には大きな可能性があることが強調された。

こうした対外的な対応と並行して、プラボウォ・スビアント(Prabowo Subianto)大統領は、規制緩和や非関税障壁の撤廃を通じて投資環境を改善し、経済成長と雇用創出を後押しする包括的な政策を準備している。さらに、国内経済の強化策として、低所得者層への504.7兆ルピア規模の社会保障支援や、関税・税制改革による企業負担の軽減を推進する。

対米依存からの脱却も模索されており、インドネシアはBRICS加盟を通じてブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカとの貿易関係を強化した。さらに、地域包括的経済連携(RCEP)や経済協力開発機構(OECD)、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)、インドネシア・欧州連合包括的経済連携協定(IEU-CEPA)、インドネシア・ユーラシア経済連合包括的経済連携協定(I-EAEU CEPA)など多国間貿易協定にも積極的に参加している。ノヴィタ・ハリディ(Novita Haridi)議員は、米国の関税措置を逆手に取り、南アジア、中東、アフリカなど新興市場への輸出拡大を進める必要性を指摘した。

また、国内産業保護の観点からは、米国製品への報復関税を導入する場合、国内製品の競争力を高め、輸入代替が進み、中小零細企業が市場価値を高める機会が生まれる可能性がある。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る