2025年06月
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先史代における人類の最も長い移動はアジアから始まった シンガポール

シンガポールの南洋理工大学(NTU)は5月16日、NTU環境生命科学工学センター(SCELSE)とアジア環境スクール(ASE)が主導する国際ゲノム研究が、先史代における初期のアジア人が人類で最も長い移動を行ったとする結果をまとめたと発表した。研究成果は学術誌Scienceに掲載された。

人類は1万年以上前の地球を歩き始め、北アジアから南アメリカの南端まで2万km以上を移動した。この移動は、複数の世代にわたり、数千年に及んだと推定される。過去の陸地は現在とは異なり、氷が特定のエリアを橋渡し、人類の移動を可能にした。

この国際ゲノム研究はGenomeAsia100Kコンソーシアムの支援を受け、139の多様な民族グループを代表する1537人のDNAを分析した。研究にはアジア、ヨーロッパ、アメリカ大陸の22機関から48人の研究者が参加した。研究チームは、アフリカで始まり、北アジアを経て、人類の移住の最終境界と考えられている現代のアルゼンチンのティエラ・デ・フエゴで終わる古代の移動ルートをたどった。

共通の祖先のパターンと、時間の経過とともに蓄積される遺伝的変異を比較することで、研究チームはグループがどのように分裂・移動し、新しい環境に適応したかを追跡した。これらのパターンにより、古代の移動ルートを再構築し、異なる集団がいつ分岐したかを推定することができた。再構築されたルートは、初期の人類がアメリカ大陸の果てにどのように到達したかを詳細に示した。この発見は、この先駆的なグループが極限の環境問題を克服し、数千年にわたる旅を完了したことを示唆した。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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